リブランディングとは?
リブランディングとは、企業や事業、サービスの既存ブランドを刷新して、新たな方向性やアイデンティティを再構築する施策のことです。時代の変化や顧客の動向に合わせてブランドを再定義することによって、市場での競争力を向上させ、新たなターゲットに魅力を提供することができます。
リブランディングは、企業ロゴやキャッチコピーなどの一部分の変更だけではなく、既存ブランドの課題に応じてコーポレートサイト全体を一新することもあります。コーポレートサイトサイトは、インターネット上の企業やブランドの顔になるため、企業のミッションやビジョンを示す場として活用する場合も多いです。
なぜ?多くの会社がリブランディングする理由
PR TIMESでは、日々多くの会社が「リブランディング」に関するプレスリリースを公表しています。なぜ様々な会社でリブランディングを注力するのでしょうか。
ここでは多くの会社がリブランディングを実施する目的を解説します。
時代に沿った市場の変化に適応できる
企業の設立当初と比べて、経済状況や消費者の嗜好、技術の進化などによって市場環境が変化することはよくあります。
リブランディングにより、企業はこれらの変化に対応し、自身のブランドを最新の市場状況に適合させることができます。市場における競争力を強化し、消費者に新鮮な印象を植え付ける機会を提供します。これは特に、市場が飽和している場合や、競合他社と差別化を図る必要がある場合にも有効です。
新たなターゲット層の獲得
企業が新しいターゲット市場を開拓したい場合、リブランディングは新しい市場に対応したメッセージを伝える手段となります。
リブランディングによって新しいブランドイメージを構築することで、従来は獲得できていなかったターゲットにもアプローチができます。
例えば、インスタント食品メーカーの主力商品は約50年にわたり消費者から愛されています。その理由として、時代に合わせたリブランディングを行っているのが特徴です。
Z世代向けにキャッチーなテレビCMや、SNSと連携したキャンペーンを打ち出し、幅広い世代にも親しまれる商品およびブランドを確立しています。
離れたユーザーの再獲得が期待できる
ブランドイメージを維持し続けることは、ユーザーに安心感を与えます。
例えば、何らかの理由で企業の評判が悪化した場合、リブランディングはそのイメージをリセットし、新たなスタートを切る機会を提供できるでしょう。大きなメリットです。
リブランディングを行うタイミング
リブランディングを実施するタイミングは、以下のような状況を参考に判断することがあります。
・既存のビジネスモデルの変更するとき |
これらの状況は、リブランディングを検討するための一部の判断基準です。ただし、リブランディングは複雑で費用もかかるため、計画的かつ戦略的な視点から進めることが重要です。
リブランディングを進めるときの4つのステップ
リブランディングを進めるときに意識したい4つのステップについて解説します。
ステップ1:現状のリサーチと分析
現在のブランドの立場、競合他社の位置づけ、目標とする顧客の理解などを深めます。これは競争環境の変化、市場の動向、顧客の要望、ビジネスモデルの進化などを通じて行われることが多いです。
ブランドの現状を分析するときのポイントは、下記のとおりです。
・ブランドアイデンティティを理解しているメンバーでチームを作る ・ブランドの目的や発信したいメッセージを再確認する ・ブランドが現在もっている強みや弱みを明確にする |
ステップ2:ブランドの課題を明確にする
現状を把握したら明確な問題点を定義します。現状の課題を特定することで、具体的なリブランディングの目的と目標が明確になります。
顧客からフィードバックを収集して、意見や感想をまとめて分析します。直接的なフィードバックは改善点を発見しやすくなるでしょう。
特定の改善を洗い出すことで、リブランディング成功を客観的に評価できます。
ステップ3:新たなブランドを検討・開発する
新たなブランドアイデンティティを作ります。それに基づいて、ブランド名やロゴ、コーポレートサイトなどのビジュアルを作り上げます。特にコーポレートサイトは企業の新しいイメージを視覚的に表現するために重要です。新たなブランドを作るときのポイントを解説します。
ペルソナを決める
ブランドの核は、「誰に」「何を」伝えるかです。新たなペルソナを設定することで、時代や新しいブランドイメージにマッチしたターゲットを見出し、適切なアプローチ方法を検討できるようになります。
実際の市場調査やユーザーアンケートなどからターゲットにマッチする人物像を作ることがポイントです。
ブランドの核は変えない
ブランディングは、「Why」「How」「What」の3つから構成されています。
・Why:何故このブランドコンセプトなのか ・How:このブランドでどのような価値を提供するのか ・What:どのような方法で価値を表すのか |
リブランディングに伴い、上記3つのいずれかに変化があらわれます。しかし、既存のブランドイメージを守りつつ新たな価値を提供するためには、変えてはならない要素もあることを覚えておくべきです。
特に変化してはならないのは「Why」です。「Why」はブランドの使命を指しており、企業が「どうあるべきか・どうありたいか」を示すビジョンともいえます。
一方、「How」や「What」はリブランディングにともない柔軟に変えていくべき部分です。ブランドの核となる「Why」(使命・ビジョン)のために、どのような価値をどのように提供するか、新たに模索していくことがリブランディングです。
ブランドが積み上げてきた資産を活かす
リブランディングは、既存ブランドを生まれ変わらせたり、成長させたりするための施策です。既存のイメージを完全に無視したものは、リブランディングではなく、新しいブランドの設立です。
リブランディングを成功に導くためには、これまでにブランドが積み上げてきた資産を活かすことがポイントです。旧ブランドの「生まれ変わり」や「成長」だと、ユーザーに示せる要素があれば、従来のファン(ブランドパートナー)も受け入れやすくなります。
ステップ4:新ブランドリブランドのリリース、浸透を図る
企画をもとに、新ブランドのイメージを固めてリリース、浸透を図ります。
リブランディングは、新しいイメージを浸透させるためのスピードが重要です。例えば、ロゴを変える場合はコーポレートサイトのみならず封筒や名刺など、こまかなアイテム類も早急に変更しましょう。
ひとつずつ順に変更していると旧デザインと新デザインが混在する時期もあるため、社内の人間やユーザーを混乱させてしまいます。新ブランド浸透までの時間が長引かないよう、リリース予定日から逆算して準備を進めることが重要です。
最初は社内に浸透、その後社外に
ブランドコンセプトは、社内の人間にとって業務や企画の指標となる重要な存在です。仮に高級感を売りにしているブランドなら、社員は安易に値引きで顧客獲得を狙おうとはせず、ブランド価値を活用した戦略を立てます。
「うちの会社はこういうスタンスだから」「これはうちのブランドに合わないから」と、社員の価値観や行動を統一させるためにも、まずは社内へ新ブランドを浸透させましょう。
最初に社内で新ブランドを浸透させてから、次にユーザーや取引先など、社外へアプローチします。
社員にリブランディングすることを通知するときは、経緯や意図、必要性、具体的な方法を必ず共有することが重要です。何の説明もなく新ブランドを提示しても、社員は他人事のようにとらえてしまいます。一方的なトップダウンと受け取られれば、社内の浸透にも影響しかねません。
社員がリブランディングの必要性を理解して、取り組みに積極的に参加してくれれば、社外への新ブランド定着スピードも早くなります。
効果測定は中長期的に取り組む
リブランディングの効果測定を定期的に行い、施策は中長期的に取り組むことが成功のコツです。施策によっては、実施直後に批判的な意見が社内外から集まります。しかし、安易に元へ戻すなどの施策は避けるべきです。
中長期的に育てるものと考え、少しずつ浸透させていくことで、新しいブランドイメージが受け入れられるようになります。批判があったからと変更直後に再び元へ戻せば、かえってブランドへの信頼性を損なうおそれがあります。
継続してブラッシュアップを続けていく
ブランドは、一度発信すれば同じイメージを維持できるものではありません。時代やユーザーニーズの変化にともない、常に成長が求められています。
効果測定の結果や市場調査を参考に、適宜ブラッシュアップを行うことも重要です。ときには、社内の変化やメインターゲットの世代交代が、施策の路線変更につながる場合もあります。
継続的に取り組むことで、時代に沿って成長できる将来性のあるブランドが構築されます。
リブランディング の成功事例から学ぶこと
リブランディングの成功事例3つ
- 事例1:ヤンマー
エンジンや農耕作業用の機械などで有名な企業でした。創業100年を超える老舗企業ですが、2013年に大胆なリブランディングを決行。
それはVI(ヴィジュアルアイディンティティ)の変更です。つまり、ロゴや製品イメージを一新するというやり方。
ただ単に新しくするだけでなく、機能的で親しみやすいイメージを変え、スタイリッシュで高級感を感じさせるイメージに変えました。
フェラーリやイッセイミヤケのデザイナーに製品のデザインを発注するなど、これまでの農業製品のイメージを覆すような発想を見せました。
- 事例2:湖池屋
お菓子メーカーとして有名な湖池屋は、2016年にリブランディングをしました。その内容は、一言でいうなれば「原点回帰」です。
1967年にポテトチップスを発明したのが湖池屋。それ以降、スナック菓子を中心に様々な商品を展開してきましたが、改めて「ポテトチップスの老舗である」イメージを全面的に押し出した製品を開発。
それが、「KOIKEYA PRIDE POTATO」という製品。素材や味にこだわるのはもちろん、パッケージも旅館や料亭を思わせる「老舗感」に溢れています。
- 事例3:ダイワハウス
老舗住宅メーカーのダイワハウスは、創業50周年を期にリブランディングをしました。
こちらのケースは、非常にシンプルで「ロゴデザインを変える」というもの。それに伴い、CMや広告などで、新たなプロモーションを展開したのです。
経営方針の切り替や、新商品の展開ではなく、ロゴを変えて企業イメージを変化させるといったような、シンプルなリブランディングも存在します。
事例からわかること
上記のリブランディングの事例をまとめると、以下のようになります。
- ヤンマー…ロゴと製品デザインを大胆に変え、ブランドイメージを一新。
- 湖池屋…原点に立ち返った商品を展開し、老舗というイメージを新たに定着させた。
- ダイワハウス…ロゴデザインを変更した上でプロモーションを展開し、新たなイメージをアピールした。
ヤンマーのリブランディングは、「プレミアム」という従来の農作業製品には無い発想でした。
それにより、ブランドイメージは一新され、スタイリッシュで高級感のある「かっこいい農作業製品」を作るブランドとして生まれ変わったのです。
新たな企業価値を生み出し、新規顧客の獲得に繋がりました。
重要なのは、この変化が既存の顧客に受け入れられ、高い評価を受けていること。新しいコンセプトを、最も理解してもらわなければいけないのは既存顧客であることを忘れずに、リブランディングを行なったが故の成功と言えます。
湖池屋の「原点回帰」という視点からのリブランディングにおいては、世間に強烈なインパクトを与えたという成功があります。
ポテトチップスとは思えないほど、重厚感のあるデザインのパッケージ、個性的なCMなどで大きな話題を呼びました。
このインパクトが元になり、「湖池屋はポテトチップスの老舗」であるというイメージが、世間に浸透したと言えるでしょう。
新しい商品を展開する上で、話題になるプロモーションを同時に展開したことによる成功例です。
最後のダイワハウスは、新たなブランドイメージを作り出すことに注力したリブランディングです。
株価の上昇という実質的な効果もありながら、社内全体のモチベーションが上がるなどの内部的な効果にも繋がりました。
リブランディングは、新規顧客の獲得や、既存顧客の新たなニーズ、社員たちの意識の変化など、様々な効果を企業にもたらすことがわかります。
まとめ
長年愛されてきたブランドも、時代の変化についていけなければ、待っているのは衰退です。適切なタイミングでリブランディングを行い、新たなユーザー獲得やファンの活性化を促しましょう。
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