目次
大前提!オウンドメディア×SEOの目的を明確にする
オウンドメディアでSEOを活用する際、まず最初に重要なのは「なぜSEOを施したオウンドメディアを運用するのか」をチーム全体で明確にし、認識を共有することです。
この目的が明確でない場合、コンテンツの方向性やテーマの設計が曖昧になり、結果として運用の軸がぶれてしまうリスクがあります。
例えば、次のような目的を設定すると、運用の指針がより明確になります。
オーガニック経由のアクセス増加
検索エンジンからの自然流入を増やすことで、広告費用に頼らずに多くのユーザーを集客すること。
自然流入を増やすことは、広告に過度に依存しない集客手段を確立するための重要な取り組みです。近年、リスティング広告やSNS広告のクリック単価(CPC)は高騰しており、特に中小企業やスタートアップにとっては広告予算を確保し続けることが難しい状況が続いています。
そのため、広告費用に頼らずに新たな顧客を呼び込む手法として、コンテンツマーケティングを軸にしたSEO施策が注目されています。
見込み顧客へのアプローチ
自社のターゲットとなるユーザーに対して、ニーズに合った情報を提供し、関心を引くこと。
SEOを活用してオウンドメディアを運用することで、自社の商品やサービスに関心のある見込み顧客を自然と集められるようになります。
例えば、自社のターゲットが抱える悩みや疑問に答える記事を作成し、それが検索エンジンで上位表示されると、広告を出さなくても毎月コンスタントに訪問者が増え、サイト全体のトラフィックが底上げされる効果が期待できます。
コンテンツの長期的な資産化
SEOを通じて作成したコンテンツを長期的な資産とし、広告の費用対効果を改善すること。
オウンドメディアが充実することで、広告の効果を高める補完的な役割も果たします。具体的には、潜在顧客が広告を見た際に、オウンドメディアの豊富なコンテンツによって信頼度が増し、購買意欲が高まるといった好循環が生まれるのです。
そのほかにも、レッドオーシャン市場においても、自然流入によるWeb集客を確立することで、CPAの高騰に左右されずに見込み顧客を獲得することが可能です。
以上のことを踏まえて、次項からは「オウンドメディア×SEOで成果を得るための具体的な方法」を解説していきます。
オウンドメディア運用におけるSEOの考え方
オウンドメディアのSEO戦略は大きく3つの側面から考えられます。大きくコンテンツSEO、内部SEO、外部SEOです。それぞれの概要を以下に説明します。
コンテンツSEO
コンテンツSEOは、記事やページ内における情報の質や関連性を高める取り組みです。ユーザーが検索しているキーワードやニーズを深く理解し、その解決策や有益な情報を提供するコンテンツを制作することが基本となります。
内部SEO
内部SEOとは、サイトの構造や技術的な要素を最適化し、クローラーが情報をスムーズに読み取れるようにする施策を指します。
具体的には、サイトのナビゲーション構造の整理、内部リンクの適切な配置、パンくずリストの設置、レスポンシブデザインの採用、XMLサイトマップの生成などが含まれます
外部SEO
外部SEOは、オウンドメディア外部の環境を整える施策を意味します。特に、他サイトからのリンク(バックリンク)が重要で、質の高いリンクを獲得することで、検索エンジンにおける信頼性や権威性が向上します。
また、SNSや他のチャネルを活用してオウンドメディアの認知を広げ、自然な形でのリンク獲得やトラフィック増加を図るのも外部SEOに含まれます。
オウンドメディアの具体的なコンテンツSEO
オウンドメディアにおけるコンテンツSEOを効果的に行うためには、次の3つの基本ステップを押さえることが重要です。
運用目的に合ったキーワードを考える
まず、自社が達成したい目標やターゲットとするユーザーに合わせて、適切なキーワードを選定します。例えば、新規顧客を増やすことを目指す場合、見込み顧客が検索しそうな検索語句をリサーチし、競合が少なく需要が高いキーワードを選びます。
また、選定したキーワードの中から、コンテンツ制作の優先度をあらかじめ決めておくことも重要です。特に新規顧客の獲得を運用目的としているならば、購買意欲の高いユーザーが検索するキーワードを優先的に取り上げ、それに基づいたコンテンツを制作することが効果的です。
一方で、自社の認知拡大を狙う場合は疑問や悩みを解決するキーワードがおすすめです。まだ自社に関心のない潜在層を含め、幅広いユーザーを獲得できます。
このように、オウンドメディアによって達成したい目的から逆算して、記事のテーマや具体的な内容を決めていきましょう。
ユーザーファーストを意識してコンテンツを制作する
SEOの基本として、ユーザーを第一に考えたコンテンツの制作により、オウンドメディアの目的達成につながりやすくなります。実際にGoogleは、企業理念のなかで以下のような考え方を示しています。
ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
Google は、当初からユーザーの利便性を第一に考えています。新しいウェブブラウザを開発するときも、トップページの外観に手を加えるときも、Google 内部の目標や収益ではなく、ユーザーを最も重視してきました。Google のトップページはインターフェースが明快で、ページは瞬時に読み込まれます。金銭と引き換えに検索結果の順位を操作することは一切ありません。
このようにGoogleは企業理念の中で一貫してユーザーファーストの姿勢を貫いています。それでは具体的にユーザーファーストなコンテンツとはどのような記事を指すのでしょうか?Google検索セントラルの「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」を参考に解説します。
対象ユーザーの存在を明確にしているか
特定のユーザー層が既に存在している、もしくは明確に想定されており、そのユーザーが直接サイトを訪問した際にコンテンツを有用だと感じると考えられるか。
実体験や深い知識に基づいているか
コンテンツが、単なる情報の羅列ではなく、実際に商品やサービスを使用したり、ある場所を訪れたりした体験に基づいた具体的で特別な知識を示しているか。
サイトのテーマや目的が明確か
サイト全体に統一されたテーマや主要な目的があり、その中でコンテンツが役割を果たしているか。
ユーザーの目的を果たす内容か
ユーザーがコンテンツを読み終えた後、「十分な情報を得た」と感じられるような内容になっているか。
有益な時間を提供できているか
コンテンツを読んだユーザーが、「読んで良かった」「役立った」と思える、満足感を得られる内容になっているか。
SEO分析ツールを用いて効果測定・改善をする
SEO対策を施したら、その効果を継続的に測定し、改善を重ねるプロセスが重要です。GoogleアナリティクスやSearch Consoleといった分析ツールを活用し、どのページがどのキーワードで流入を得ているか、滞在時間や離脱率はどうかなどのデータを確認します。
SEO分析ツール | 概要 | 指標 |
Google Search Console | Google検索結果でのサイトの掲載順位を監視、管理、改善するのに役立つGoogleの無料サービス | ・検索順位 ・記事のクリック率 ・流入キーワード |
Google Analytics | サイトに訪れたユーザーの属性や行動を深く分析できるGoogleの無料サービス | ・ページごとの滞在時間 ・ユーザーの年齢や居住地域 ・コンバージョン数 |
データをもとに、タイトルやメタディスクリプションを変更したり、コンテンツをアップデート・リライトすることで、より効果的な運用が可能になります。
オウンドメディアの具体的な内部SEO
オウンドメディアを効果的に運用するためには、内部SEOを考慮することが欠かせません。具体的には、以下の2つの内部対策が特に重要です。
・メディアの構造を分かりやすくする
・ユーザーがストレスなく読めるページを意識する
それぞれみていきましょう。
メディアの構造を分かりやすくする
オウンドメディアの構造をシンプルにすることで、ユーザーや検索エンジンのクローラーが内容をより簡単に理解できるようになります。
まず、メディアの構造をシンプルに保つために、トップページから各コンテンツへ2〜3クリックでアクセスできる設計を目指しましょう。また、サイト全体の構造を分かりやすくするためには、「XMLサイトマップ」を作成したり、「パンくずリスト」を設置することが有効です。ユーザーは自身がどのページにいるかを把握しやすくなります。
さらに、関連性の高いコンテンツを内部リンクで結ぶことも重要です。各記事から、商品やサービスに関連する記事へ適切にリンクを張ることで、コンバージョンへつなげる効果が期待できます。
このように、個々のコンテンツの質を高めるだけでなく、メディア全体の構造を意識することが、検索順位の向上とユーザーの購買意欲を高めることに効果的です。
ユーザーがストレスなく読めるページを意識する
ユーザーがストレスなくコンテンツを読めるようにすることで、ページ滞在時間が増加し、SEO評価の向上につながります。特に、テキストコンテンツが中心となるオウンドメディアでは、モバイルフレンドリーな対応が重要となります。
まず、スマートフォンやタブレットなど、どのデバイスでも快適に閲覧できるレスポンシブデザインの採用を検討しましょう。例えば、WordPressを利用している場合、レスポンシブ対応のテーマやプラグインを導入することで、モバイルユーザーにとっても読みやすいレイアウトになります。
また、視覚的な要素を活用することも効果的です。テキストだけでは伝わりにくい内容は、要点をまとめたオリジナルの図解や、分かりやすい画像、動画を加えることで、ユーザーの直感的な理解を促しやすくなります。
オウンドメディアの具体的な外部SEO
外部SEOは、自社サイトの評価を外部のウェブサイトを通じて向上させる施策を指します。具体的には以下の2つが重要です。
自社と関連性の高いメディアからの被リンクを集める
自社と関連している外部メディアからの被リンクを獲得すると、検索エンジンから信頼性が高いメディアだと評価され、検索上位表示されやすくなります。
例えばIT関連のオウンドメディアなら、同業界の大手メディアやまとめサイトで自社の記事が紹介されるなどが考えられます。
良質な被リンクを集めるには、オウンドメディアのテーマに沿った高品質なコンテンツを制作し続けることが重要です。自社ならではのデータ・ノウハウを盛り込んだ特集や、専門家が監修した記事などは、外部から引用されやすくなります。
外部からのサイテーションを獲得する
外部からのサイテーション(サイト名や企業名などが、他サイトに掲載されること)の獲得も、オウンドメディアのSEO対策のひとつです。サイテーションにより、自社やサービスの認知度が向上し、自社名での検索や他メディアから引用される機会が増えていきます。
例えば、オウンドメディアに公開した記事や特集を自社SNSで発信すれば、効果的に拡散できます。SNSでトレンドの情報を深掘りした記事や、紹介割引といったユーザーがメリットを得られる特集などは、関心を持たれやすいでしょう。
SEOを施したオウンドメディアの構築も重要
ここでは、SEOを考慮したオウンドメディアの作り方について紹介していきます。
モバイルでのユーザビリティを優先する
オウンドメディアを作成するときは、モバイル端末(スマートフォンやタブレットなど)のユーザビリティを優先することが効果的です。
総務省が発表している『情報通信白書』によると、2021年時点で情報通信機器の世帯保有率は、下記のとおりでした。(参考:総務省「情報通信白書令和4年版」)
・スマートフォン:88.6%
・パソコン:69.8%
以前はパソコンが通信機器の代名詞ともいえましたが、近年はスマートフォンが主流となっています。そのため、オウンドメディアもパソコン閲覧のみではなく、スマートフォンからのアクセスを想定した構造作りが不可欠です。
たとえば、パソコンのみに適応したサイトをスマートフォンで閲覧すると、サイトデザインがそのまま反映されるため、文字やボタンが小さく表示されます。パソコンの画面サイズに合わせて作成されたデザインが、スマートフォンの小さな画面サイズに合わせて自動で縮小されるためです。
スマートフォンでウェブサイトを閲覧するユーザーをリピート訪問や購入・資料請求などのコンバージョンにつなげるためには、文字やボタンが適切なサイズで表示されるよう設定しなくてはなりません。
他にも屋外での閲覧を想定したコントラスト調整を行うなど、文字サイズ以外のデザインも考慮しましょう。
カテゴリーとタグの構造を設計する
ユーザーがスムーズに他のページも閲覧できるよう、カテゴリーとタグの構造も適切に設計する必要があります。
カテゴリーとタグの違いは、下記のとおりです。
・カテゴリー:縦の構造にもとづいたページの分類
・タグ:同じグループのつながり
カテゴリーは、ウェブサイトの縦の構造です。親カテゴリーの下に複数の子カテゴリーがある、というように上下の階層構造となっています。
たとえば、化粧品メーカーがウェブサイトを作成するとき、「スキンケア」「コスメ」などカテゴリーを複数設けたうえで、それぞれ記事を増やしていきます。
カテゴリーを正しく分けていると、関連性の高いページを「関連記事」として内部リンクしたりサイト構造を整理したりと、ユーザーの利便性を向上させられます。
一方のタグは、縦の構造に関係なく分類できる、同じグループのつながりです。カテゴリーは1つの記事に対して1つしか設定できませんが、タグは複数設定できるのが大きな違いです。
化粧品メーカーが「クレンジング」に関する記事を作成するとき、カテゴリーは「スキンケア」の設定しかできませんが、タグは「商品名」や「クレンジング」「テクニック」など複数設定できます。
ウェブサイトを作成したばかりで質の高いカテゴリーを設定できないときは、質の低い部分のみnoindex設定を活用して、インデックスされないようにする方法もおすすめです。
ディレクトリ構造はシンプルにする
ディレクトリ構造は、可能な限りシンプルにまとめることが重要です。
ウェブサイトのトップページから移動できる「会社概要」「取扱商品」「リクルート情報」などの各ページもディレクトリの一種です。
ディレクトリ構造は検索エンジンからの評価に直接影響するわけではありませんが、ユーザーの利便性を考慮するのであれば、可能な限りシンプルに設計する必要があります。
ユーザーが今どこのページを閲覧しているのかわかり、最小限のクリックやタップで目的のコンテンツへ移動できるディレクトリ構造は、ユーザーの利便性を高めるために不可欠です。検索エンジンのクローラーもウェブサイト内を巡回しやすくなり、正しく評価できます。
各種ファイルを取りまとめているフォルダのようなもので、コンテンツまでの階層構造を指します。
robots.txtでクローリングをコントロールする
ウェブサイト全体の評価を上げるために必要な作業のひとつが、robots.txtによるクローラー巡回のコントロールです。
コンテンツをいくつも作成していると、順位がなかなか上がらない記事も生まれます。品質の低いコンテンツがクローラーにインデックスされた場合、ウェブサイト全体の評価にも影響するおそれがあります。
robots.txtを活用すると、任意のコンテンツに対するインデックスを避けることが可能です。また、サイトマップファイルの存在をクローラーに伝える役割もあります。※ただし、すべてのrobots.txtにクローラーが従うとは限りません。
必要な構造化データを設置する
構造化データとは、検索エンジンのクローラーにウェブページの構造を伝えるための専用コードのことです。必要な構造化データを正しく設定することで、検索エンジンがウェブサイトの構造をより理解してくれるようになります。
設置すべき構造化データは、記事、パンくずリスト、ハウツーの3種類です。
■記事に関する構造化データ
記事に関する構造化データには、Article、NewsArticle、BlogPostingの3つがあります。
自社サイトのスタイルに合ったものを選び設定します。WordPressなどのCMSを利用している場合は手動で設置するよりも、プラグインを使用したほうが手軽に適用できることもあります。
■パンくずリストの構造化データ
パンくずリストとは、ウェブサイトを訪れたユーザーが今どこのページを閲覧しているのか分かりやすくした表示のことです。
たとえば、ユーザーがウェブサイトのトップページから会社案内へ進み、会社概要ページを閲覧しているとき、下記のように表示されます。
トップページ>会社案内>会社概要
パンくずリストは複数の種類があります。それぞれの特徴は、下記のとおりです。
・位置型パンくずリスト:階層構造内のどこにいるか表示する
・属性型パンくずリスト:どのカテゴリー(属性)に属しているか表示する
・パス型パンくずリスト(履歴型):ページへ辿り着くまでの経路を表示する
運営しているウェブサイトに合ったタイプを設置すると、クローラーの巡回もスムーズになります。
■ハウツーの構造化データ
ハウツーとは、とあるタスクを完了するまでの手順や注意点などを記載したコンテンツのことです。ハウツーの構造化データを設置すると、該当コンテンツがハウツー系であることを検索エンジンに伝えられます。
検索結果のリッチリザルトに自社サイトの情報が表示されやすくなるなど、よりターゲットユーザーにアプローチできる機会が増えるメリットもあります。
SEO×オウンドメディア運用時の注意点
オウンドメディアでSEO施策を行う場合は、以下の2点に注意が必要です。
・長期的な視野で対策を進める必要がある ・専門知識や経験が不足していると成果につながりにくい |
オウンドメディアの立ち上げから検索上位表示されるまで、半年程度はかかるといわれています。検索エンジンから評価されるまでに質の高いコンテンツを蓄積する必要があるためです。
そのためにも、施策の責任者や担当者を明確にするなど、PDCAサイクルを長期的に回せる十分な体制づくりが鍵となります。
また、専門知識や経験が不足したまま対策を進めても、競合サイトよりも優位に立てず、時間とコストの無駄になりかねません。オウンドメディアの設計には、SEOはもちろん、コーディングやデザイン、ライティングの専門知識などが必要です。
もし社内のリソースが不足しているのであれば、専門会社に外注するのも選択肢のひとつです。一定のコストはかかるものの、専門知識を借りることで効率的かつ着実にオウンドメディアを成長させられるでしょう。
まとめ
オウンドメディアのSEOでは、運用目的に合ったキーワード選定やユーザーファーストのコンテンツ制作などが基本です。メディアの構造を最適化する内部対策や、関連性の高いメディアからの被リンクを獲得する外部対策も欠かせません。
また、オウンドメディアの運用には、長期的なコンテンツ制作と改善の取り組みが重要です。社内の運営体制を整えた上で、リソースが足りない業務は専門会社への外注も視野に入れつつ実践しましょう。