ファンマーケティングの事例6選!成功するポイントと事前に知っておくべき注意点とは

「ファンマーケティングが実際に成功した事例を知りたい」「ファンマーケティングを成功させるためにはどうしたらいい?」このように考えている企業担当者の方もいることでしょう。 ファンマーケティングとは、企業やサービス・商品を熱心に応援してくれるファンを育て、中長期的に売上を向上させるマーケティング手法です。 顧客が商品やサービスを使い続けてくれるため、SNSへ投稿して口コミが広がりやすい特徴があります。 本記事ではファンマーケティングの成功事例や成功させるポイント、失敗しやすいファンマーケティングの特徴や実施する際の注意点を解説します。

ファンマーケティングが重要視される理由

ファンマーケティングが重要視されるようになった理由は、以下の2つです。

・少子高齢化により新規顧客を獲得しにくくなった
・個人の影響力が高まった

日本は少子高齢化が進んだ結果、若年層が減少して市場が縮小しました。

新規顧客の獲得が難しくなってきたため、既存の顧客にファンになってもらい継続的な購入が見込めるファンマーケティングの重要度が増したのです。

また、近年ではSNSが普及したため、個人の口コミを見て商品やブランドを認知することが増えました。信頼性の高い人のSNSアカウントから情報を得て商品を購入し、そこから商品やブランドのファンになる人もいます。

つまり、SNSにより個人の影響力が高まったことで、ファンマーケティングを重視する企業も増えているということです。

ファンマーケティングの成功事例6選

ファンマーケティングの成功事例は以下の6つです。

・ファン化施策でシェアを1.8倍に|mineo
・ファンの声を聞き1年で発行部数が1.42倍に改善|レタスクラブ
・3万人超えのファンコミュニティ|KAGOME
・アンバサダーの導入で自然な口コミを発生|ワークマン
・ファンのアイデア採用でヒット商品続出|無印良品
・SNSに力を入れて約5,000人の観客で会場を埋めた|川崎ブレイブサンダース

成功事例をひとつずつ解説します。

ファン化施策でシェアを1.8倍に|mineo

格安SIMのmineoは、ファン同士のコミュニティを多数開催しました。その結果、格安スマートフォン市場でのシェアが3年間で5%から9%に増加したのです。

格安SIMは競合が多く顧客を掴み続けにくく、差別化を行っていないときはシェア率が5%しかありませんでした。

そこで、以下の施策を行い、ユーザー同士の交流場所を作成したところ、シェア率が向上しました。

・マイネ王:ファンコミュニティサイト
・フリータンク:ユーザー同士でデータ容量をシェアする仕組み
・ファンの集い:最大100人を招待してmineoのクイズなどを行うイベント
・Q&Aコーナー:ベテランが新規ユーザーの質問に回答する場所

格安SIMという料金だけでの差別化が難しい分野でも、ファンマーケティングを成功させることでシェア率を向上できた事例です。

出典:ファンベースなひとたち
出典:熱烈ファンの手でサービスが自走する mineoの実践ファンベース

ファンの声を聞き1年で発行部数が1.42倍に改善|レタスクラブ

レタスクラブは、ファンの意見を聞くイベントやファンの家を訪問するコンテンツを導入し、わずか1年で発行部数が66,000部も伸びました。

レタスクラブは、2016年には発行部数が12万部まで減少しており、休刊の危機に陥りました。しかし、以下の施策を行い、ファンの声を雑誌に反映することで状況を改善していったのです。

・LINEレタス隊の開催:月に1回のファンミーティング
・ヨネスケ調査:ファンの自宅に訪問して食卓や冷蔵庫の中の撮影

限られたファン向けの施策に見えて、ファンと同様の価値観をもつ新しい読者にも刺さるコンテンツを作成しました。

出典:ファンベースなひとたち
出典:出版不況に爆伸び、レタスクラブの「神会議」

3万人超えのファンコミュニティ|KAGOME

KAGOMEは、ファンコミュニティサイトを立ち上げ、熱量が高いファンをつなぎとめることに成功しました。結果として、一般消費者の1.4倍もの購入金額、購入種類も2倍のファンを約3万人以上の獲得に成功します。

KAGOMEは2015年から野菜と果物のミックス飲料の市場規模が縮小し、売上が鈍化しました。
また、他社のトマトジュースが増えたこともあり、今までKAGOMEを購入していた方の3割が離脱した状況に陥り、コミュニティサイトの立ち上げを決断したのです。

・&KAGOMEの立ち上げ:ファンコミュニティサイト
・開発担当者のインタビュー記事を掲載
・イベント開催:会員を対象に工場見学やクイズ大会などを行った
・トマコミの作成:ファン用の掲示板

既存のファンが喜ぶ施策だけでなく、新規ファンが参加できる施策も組み合わせたことが良い結果につながったと考えられます。

出典:売上の3割を生み出す2.5%のコアなお客様。「好き」を育てるカゴメのコミュニティサイトとは?

アンバサダーの導入で自然な口コミを発生|ワークマン

ワークマンでは、女性ブロガーが紹介した溶接作業用上着の売上が、年間2,000〜3,000枚から4,000〜5,000枚に向上しました。

その後、女性ブロガーに声をかけて、キャンプファンや女性ユーザー向けの商品を共同開発し、10万枚超えの大ヒット商品の開発に成功します。これに手応えを感じたワークマンは、公式アンバサダープログラムを開始し、ワークマン製品を愛用する人に声をかけました。

実際にワークマンを愛用している方にアンバサダーになってもらうことで、視点が広がり結果につながったのでしょう。

出典:ワークマンのアンバサダーマーケティングによるUGC活用

ファンのアイデア採用でヒット商品続出|無印良品

無印良品は会員制のファンサイトを開始して、ファンとともに商品開発のアイデアを出し合いました。その後、従来の方法で開発した商品の10倍以上もの売上を記録した「体にフィットするソファ」が誕生しています。

無印良品はファンサイトを会員制にしてアイデアを集めるだけでなく、商品の開発途中やストーリーを記載して、意見を取り入れていることが伝わるような工夫もしています。この施策により、ファンが愛着を持ちやすくなったこともポイントのひとつでしょう。

出典:長く愛されるものづくり哲学。「体にフィットするソファ」ロングセラーへの開発秘話。

SNSに力を入れて約5,000人の観客で会場を埋めた|川崎ブレイブサンダース

B.LEAGUEの川崎ブレイブサンダースは、平均3,701人の来場者数だったものを、SNS施策を駆使することで平均4,732人まで増員させました。

インスタグラムとX(旧:Twitter)を使い分けており、各SNSにいるファンを意識した発信も開始しました。

・X(旧:Twitter):リアルタイム実況や練習前の光景を配信
・オンラインサロン:選手と直接会話できる
・ライブ配信:毎日の練習や選手・監督・スタッフの配信

試合以外で選手とファンが触れ合える場を作ることで、より多くのファンの獲得に成功します。また、試合に来られない方に向けたアプローチも行ったことで、新規ファンの獲得も行えたのでしょう。

出典:ファンをつくる、川崎ブレイブサンダースのSNS戦略

ファンマーケティングを成功させるポイント4選

ファンマーケティングを成功させるポイントは以下の4つです。

・ファンの定義を明確にする
・KPIを売上にしない
・ファン同士で交流できる場を作る
・ファンと交流する頻度を増やす

ポイントをひとつずつ解説します。

ファンの定義を明確にする

マーケティングを適切に行うためにも、ファンの定義は明確にしてください。

ファンの定義が曖昧だと需要のない情報の発信や、無駄なアプローチなどをしてしまいファンマーケティングが失敗するからです。

自社製品のリピーターの年齢層、性別、家族構成などを把握して、どのような方がファンなのか分析しましょう。

KPIを売上にしない

ファンマーケティングの効果測定では、KPI(重要成果指標)を売上にしないでください。

ファンマーケティングは中長期的に売上につなげるマーケティングのため、売上だけを見ると失敗しやすいからです。ファンマーケティング主なKPIは以下のとおりです。

・購買回数:ファンのリピート購入頻度が分かる
・NPS(顧客満足度):ファンの満足度とロイヤリティを測る指標で、他人に勧められるほど満足しているか分かる
・コンテンツの閲覧数・再生回数:提供中のコンテンツに関する関心が分かる

上記のいずれかをKPIにすると良いでしょう。

ファンと交流する頻度を増やす

ファンとの信頼関係を構築するためには、交流する機会や頻度を増やすことも大切です。

交流する機会や頻度を増やすことで、ファンが親しみを持ちやすくなるからです。SNSを用いる場合は、自社の投稿についたリプライへの返信だけでなく、自社からいいねやRP(RT)も行ってください。

すでにファンが多い場合は、利用しているSNSが異なることがあるため、複数のSNSで施策を同時に進行しましょう。

ファン同士で交流できる場を作る

製品やサービスへの愛着を増すためには、ファンミーティングやコミュニティでファン同士で交流できる場を作ることも重要です。

交流の場を作ることで、情報交換だけでなく自社商品やサービスへの理解度も深められることが理由です。

また、ファン同士の交流をもとに新しいアイデアが生まれる可能性もあります。交流の場としては、オフ会、セミナー、ワークショップなどが代表的な例です。

失敗しやすいファンマーケティングの特徴

失敗しやすいファンマーケティングの特徴は以下のとおりです。

・ファンへのプロモーションが多過ぎる
・排他的なコミュニティ

ファンマーケティングを成功させるためにも、ひとつずつご覧ください。

ファンへのプロモーションが多過ぎる

ファンのコミュニティサイトやSNSのプロモーションで、既存商品のプロモーションが多いと、セールス感が強くファンの購買意識が下がります。

ファンのコミュニティでは、ファンに商品を売り込むのではなく、協力して売ってもらう意識が大切です。

ファンを巻き込んだプロジェクトにすることで、ファンの熱量も上げられます。

排他的なコミュニティになっている

新規のファンが入りにくいコミュニティの場合は、排他的なコミュニティとなり、新規顧客を掴みづらくなります。

例えば、既存ファンと企業側がフレンドリーすぎる関係性がゆえに、新規のファンが入り込めない状態になることがあります。新規のファンが既存ファンとの格差があると判断してしまうパターンです。

既存ファンと新規ファンの多少の差別化をしたいのであれば、イベントを交互に行うなどの対応が必要です。

ファンマーケティングの注意点

ファンマーケティングの注意点は以下の2つです。

・長期的な施策になる
・炎上のリスクがある

注意点をひとつずつ解説します。

長期的な施策になる

単なる商品の購入者からファンに育成するためには、数多くの施策を行う必要があり、時間がかかります。

ファンになってもらうためには、商品を購入してもらうだけでなく、ブランドやサービスに対して愛着や共感を持ってもらう必要があるからです。

ファンマーケティングでは認知拡大に向けた宣伝、購入を促す商品紹介、ブランディング、リピーター施策などの実施が必要です。

そのため、ファンマーケティングは中長期的な実施が前提になると考え、計画と目標を設定しましょう。

炎上のリスクがある

ファンマーケティングはほかのマーケティングよりも顧客との距離が近いため、距離感やコミュニケーションを間違えると炎上のリスクがあります。

炎上すると商品だけでなく企業のイメージダウン、リピーターの減少、新規獲得の難化などのリスクがあることを覚えておきましょう。

イベントなどの場でもカジュアルに話しかけ過ぎると良くないこともあり、距離感の見極めが必要です。また、ファン同士の交流の場でも、熱狂的なファンが他社のネガティブな意見に反応して炎上することも考えられます。

そのため、交流の場所を作成する場合でも、ファン同士のコミュニケーションをある程度コントロールして炎上を避けてください。

まとめ

ファンマーケティングは適切に行うことで、売上の向上につながる施策のひとつです。

特に近年は少子高齢化やSNSの発展にともない、ファンマーケティングの重要性は増しているでしょう。

本記事で紹介したファンマーケティングの成功例や、成功のコツをみて、自社のファンマーケティングに活かしてください。