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ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、クライアントや消費者を単なる購入者として考えるのではなく、企業ブランドや商品、サービスに対して愛着を持つ「ファン」として育成して、中長期的な関係を築いていくマーケティング戦略のことです。
新規・既存顧客に関わらず、接点を増やして消費者の生活や価値観に深く根差した関係を築くことで、単なる消費者から忠誠心に近い感情を持つ企業のファンとなり、LTV(顧客生涯価値)の向上を図ることができます。
ファンマーケティングに注目が集まる理由
ファンマーケティングに注目が集まる理由に、インターネットやSNSの普及が挙げられます。現代のユーザーの購買行動として、購入前にSNSを通じて口コミや評価に触れ、その意見を参考に商品購入に至るケースが増えました。
またインターネットの普及から手軽に情報を入手できる環境だからこそ、意思決定には購入者や体験者の口コミをより重視する傾向になったと考えられます。
実際に、2021年に株式会社ネオマーケティング社が行った「ファンづくりに関する調査」でも、企業の認知には口コミの影響力が大きいことが分かります。
ファンとなった企業・ブランドを知ったきっかけ | 割合 |
テレビCM | 21.3% |
SNS | 20.2% |
知人・家族・パートナーの紹介 | 19.8% |
また、ファンマーケティングに注目が集まる理由のひとつとして、少子高齢化により顧客の獲得が難しくなってきていることが挙げられます。多くの企業では、LTVを高めるためにもファンを定着させ、リピーターになってもらうことが非常に重要です。
一人の顧客に長期間サービスや商品を購入してもらえるよう、ファン獲得に向けて多くの企業がファンマーケティングに注目しています。
出典:20歳~69歳の男女1000人に聞いた「ファンづくりに関する調査」|株式会社ネオマーケティング社
ファンマーケティングに取り組むメリット
ファンマーケティングには、以下のような取り組むべきさまざまなメリットがあります。
・売り上げ向上につながる
・口コミで新規顧客を取り込める
・ユーザーの意見を獲得できる
主なメリットを3つ解説していきます。
売り上げ向上につながる
ファンを獲得すると価格競争に巻き込まれにくくなり、中長期的な売り上げ向上につながります。ブランドや商品を愛用してくれるファンは価格に左右されず、自社商品が他社より高額であっても購入してくれる場合があるからです。
商品の購入だけでなく、会員のみに発する情報発信の場を設けることでも、売り上げ向上が期待できます。
口コミで新規顧客を取り込める
ファンの口コミやレビューを見たユーザーを新たな顧客として取り込める点は、ファンマーケティングにおけるメリットのひとつです。
総務省の調査によると、商品購入の際、口コミやレビューを参考にする20〜60代の人は全体の過半数を占めています。
ファンマーケティングは既存の顧客に向けたマーケティングですが、ファンの愛着心や購買意欲を高めることで、口コミでの新規顧客獲得も十分期待できます。
出典:平成28年版 情報通信白書|総務省
ユーザーの意見を獲得できる
ファンミーティングの開催やファンコミュニティの設定など、ファンとの交流を行うことで、ユーザーの意見を獲得できます。
ユーザーの意見は、今後の開発やマーケティング戦略の方針に活かせる良質なフィードバックです。実際に商品を愛用するファンに新製品のサンプリングを試してもらい、アンケート調査を行えば、商品開発時の品質向上に役立てられます。
ファンマーケティングとファンベースマーケティングの違い
ファンマーケティングに似た言葉として、ファンベースマーケティングがあります。大きな違いは、企業が目指す成果が異なる点にあります。
ファンマーケティングは、商品やサービスに愛着を持つファンを増やすマーケティング手法です。一方、ファンベースマーケティングは、ファンの声を取り入れた商品やサービスづくりを行うマーケティング手法のことを指します。
それぞれのマーケティングでできることは異なるため、自社の目指す成果によって取り入れる手法を決めましょう。
手法 | 目指す成果 |
ファンマーケティング | ・新規顧客・新たなファンの獲得 ・新規市場の進出 ・ブランドの認知度向上 |
ファンベースマーケティング | ・既存顧客との関係を強化 ・長期的かつ安定した収益の確保 |
ファンマーケティングの手法
ファンマーケティングを行う手法は、主に「企業とファン間での交流」と「ファン同士の交流」の2つがあります。ここからは、それぞれの手法を詳細にみていきましょう。
企業とファン間での交流
企業とファン間での交流には、SNS発信をはじめとした以下のような方法があります。
方法 | 内容 |
SNS発信 | ・SNS(XやInstagram、Facebookなど)で発信する ・DM・リプライで交流する |
ライブ配信 | ・ライブ配信を行い、コメントしてもらう ・視聴者の反応を見ながら商品紹介などを行う |
サンプリング体験 | ・愛用者など一部の既存の顧客限定でサンプリングを行う ・既存顧客へ新製品アピールを行い、意見を募る |
メルマガ配信 | ・既存顧客に向けて商品アピールやセールを行う |
企業とファン間での交流は、企業側の発信が中心となるものが多い点が特徴的です。企業発信のため、ファンからの意見収集は難しい場合も多いでしょう。一方で、企業側が交流のタイミングを調整できる点は大きなメリットといえます。
ファン同士の交流
ファン同士では、以下のような交流があります。
交流 | 内容 |
ファンマーケティング | ・企業がファンとの交流の場を設けて行う ・企業とファン間での交流でありながら、ファン同士の交流の機会にもなる |
ファンコミュニティ | ・企業が情報発信したり、ファンが情報の発信や交流ができる場 ・主に企業がウェブサイトなどを設置する |
ファン同士の交流は、ファンがお互いにコミュニケーションをとれる場を設け、商品やサービスについて語り合ってもらうことが目的です。ファン同士の交流により、自社商品やサービスへの愛着心が芽生え満足度向上につながります。
ファン同士の自由な交流が重要な一方、コミュニティの健全な運営には、炎上対策などある程度規制した管理体制を整えることも必要です。
ファンマーケティング成功事例
ファンマーケティングはファン獲得に有効なマーケティング手法であり、さまざまな企業が実践しています。ここからは、各企業の成功事例からファンマーケティングの効果をみていきましょう。
株式会社ワークマン
成功事例の一つ目は、熱心なファンを公式アンバサダーとし、ブランドを広めてもらった株式会社ワークマンの事例です。
同社ではファンを公式にアンバサダーとして認定し、情報提供のうえワークマンを紹介してもらっています。
アンバサダーはYouTuberやインスタグラマーなどが多いですが、ただインフルエンサーを起用している訳ではありません。ワークマンの熱心なファンであり、かつ、キャンプや釣りなどある分野に精通した人物を選定しています。宣伝に必要な知識を保有しているため、ワークマンの魅力を最大限に伝えられるということです。
元々ファンであるアンバサダーに宣伝してもらうことで宣伝の熱量が高くなり、広告費削減にもつながっています。
チロルチョコ株式会社
二つ目の成功事例は、オフライン・オンラインでファンミーティングを実施し、ロイヤリティを高めたチロルチョコ株式会社の成功事例です。
オフラインミーティングでは、オリジナルの貼箱を作れるワークショップや、新商品のプレゼンをファンに評価してもらうイベントなど、ここでしか得られない体験を提供しています。
オンラインミーティングでは利きチロルやチロルチョコクイズなど、ファン同士の交流も深められる満足度の高いイベントを開催しました。
また、SNSの運用にも注力しており、SNSを企業とユーザーとのコミュニケーションツールと考え運用しています。一般的にウェブサイトからの募集が多いイベント参加者も、SNSで募りました。
ファンとのコミュニケーションを重視して、ユーザーのロイヤリティを高めることに成功した例といえるでしょう。
株式会社MAPPA
三つ目の成功事例は、ファンの共感や、ファンの求める体験を提供し、クラウドファンディングが成功した株式会社MAPPAの事例です。
同社は「この世界の片隅に」のアニメ映画製作費を、クラウドファンディングで募りました。返礼品として制作過程の展開や、作品への思いをユーザーに共有し、ファンから共感を得ることに成功しています。
また、制作支援メンバーミーティングの参加権利や、ミーティングで一部上映を行うなど、的確に「ファンが求める体験」を提供しています。結果クラウドファンディングは成功し、合計約3,600万を超える調達に成功しました。
ファンマーケティングを成功に導くポイント
ファンマーケティングを成功に導くためのポイントを2点紹介します。
ファン同士の交流の場を制御する
ファンマーケティングに取り組む際は、炎上のリスクを考慮し、ある程度ファン同士の交流のコントロールが必要です。
ファンミーティングの開催やファンコミュニティなど、ファン同士の交流は自社ブランドへの愛着心を高めるなどのメリットがあります。一方で、熱烈なファンは自分の意見やブランドに肯定的ではない者に対し、排他的になりやすい傾向もあります。そのため、炎上を避けるために、適宜交流の場をコントロールしたほうが良いでしょう。
ファンミーティング実施後は、ポジティブな意見や秘話をミーティングに参加できなかったファンに発信するのもおすすめです。参加できなかった人も今まで知らなかった情報を得られるため、よりブランドに対する愛が深まります。
ファンのニーズを理解する
ファンのニーズを理解し、求められている体験やサービスを提供することは、ファンマーケティングにおけるポイントのひとつです。ニーズを理解するために、ファンの声を積極的に取り入れましょう。
ファンは企業や商品・サービスを応援する心理から、モニター募集や満足度などの調査に協力してくれやすいです。ユーザーは企業や商品・サービスのどこが好きで、どういった体験を求めているかファンに調査を行い、ファンのニーズへの理解を深めましょう。
まとめ
ファンマーケティングは、ブランドや商品、サービスに対し愛着をもったファンを増やすマーケティング戦略です。企業とユーザーの結びつきを強化するのに効果的で、さまざまな企業がファンマーケティングに取り組んでいます。
ファンマーケティングを行う手法は、主に「企業とファン間での交流」と「ファン同士の交流」の2つです。「売り上げ向上」「新規顧客の獲得」「ユーザーの意見獲得」などのメリットがあるため、ぜひ成功事例を参考にしてファン獲得に役立ててください。