ECサイトのコンテンツマーケティングとは?活用例やポイントを解説

ECサイトでコンテンツマーケティングを展開することで、商品の認知度を向上させて、集客や売上の増加を目指すことができます。とはいえ、ECサイト運営担当者の中には、「どのようなコンテンツが自社ECサイトに合うのか」や「どのように運用を進めるべきか」といった疑問を抱えている方も多いことでしょう。 この記事では、ECサイトにおけるコンテンツマーケティングの概要やそのメリットに加えて、効果的なコンテンツの種類や運用のポイント、そして成功事例を詳しく解説します。

ECサイトのコンテンツマーケティングとは

そもそもコンテンツマーケティングとは、価値ある情報をユーザーに提供し、認知度の向上や集客、顧客のファン化を目指すマーケティング手法のことです。

ECサイトに特化したコンテンツマーケティングとは、商品やサービスを単に売るのではなく、顧客にとって有益で興味深い情報を提供することを中心に行われます。広告に頼らず、顧客との関係性が深まり、購入意欲を高めたり、リピーターを増やしたりすることを目指します

代表的なコンテンツマーケティングの手法として、オウンドメディアが挙げられます。商品に関連する情報や利用方法、選び方などを紹介するコンテンツを掲載します。

例えば、ファッションECサイトなら、季節ごとのトレンドやコーディネート方法を提案することが考えられます。

そのほか、ECサイトにおけるコンテンツマーケティングの具体的な活用例をみていきましょう。

カテゴリ 活用例 期待される効果
集客コンテンツ 商品の使用方法や選び方に関するお役立ち記事 ・検索エンジンからの流入増加
・ユーザーに信頼感を与える
商品の魅力を視覚的に伝える動画 ・短期間での商品理解を促進
・感情に訴えかけ、購入意欲を刺激
キラーコンテンツ 商品の比較記事(他社製品との違いを説明) ・ユーザーの疑問や不安を解消
・購買の意思決定を後押し
購入者レビュー(実際の使用感や評価を共有) ・共感を生み出し、信頼性を向上させる
・購入後の使用イメージを明確にし、購入を促進
コミュニケーション SNSでユーザーからの質問へ回答 ・顧客対応への信頼感を得られる
・ユーザーのエンゲージメント向上
投稿へのリアクションに特典を配布 ・ユーザーのファン化を促進
・リピーターの育成

上記のような取り組みをウェブサイトやSNS、メールマガジンなど複数のコンテンツで展開することで、ユーザー体験をより豊かにできます。

ECサイトでコンテンツマーケティングを行うメリット

ECサイトにおけるコンテンツマーケティングには、大きく分けて以下2つのメリットがあります。

・ECサイト・ブランドの認知度やイメージを向上させられる
・ユーザーの購買意欲を高められる

それぞれのポイントについて、具体的な理由や実例を挙げながら解説します。

ECサイト・ブランドの認知度やイメージを向上させられる

コンテンツマーケティングにより、自社を知らない潜在層にも情報を届けられるため、ECサイト・ブランドの認知度やイメージの向上が期待できます。自社に対する深い印象を残せれば、ユーザーが商品に関連するニーズを自覚した際に、自社を思い出すきっかけになるでしょう。

直接的な売り込み型の広告に抵抗感を示すユーザーは少なくありません。一方で、役立つ情報を自然な形で届けるコンテンツは「有益で信頼できる」と認識され、ユーザーに受け入れられやすいのが特徴です。

例えば、アパレルECサイトが「季節別のコーディネート術」を紹介する記事や動画を作成すると、ユーザーにとって実用的な情報として評価されます。その結果、ブランドへの好感度が高まり、継続的な情報発信によってサイトへの再訪も促せます。

魅力的なコンテンツはSNSでシェアされやすいため、ECサイトやブランドのさらなる認知度向上にもつながるでしょう。

ユーザーの購買意欲を高められる

コンテンツマーケティングは、商品の購入率やサービス利用率を向上させる効果があります。購入前にユーザーが抱える不安や疑問を解消し、商品の魅力を具体的に伝えられるためです。

例えば、家具を扱うECサイトが「狭い部屋を広く見せるレイアウトのコツ」の記事や、実際に家具を使用するシーンの動画を公開したとします。ユーザーは商品の使用イメージを具体的に思い描けるようになり、購入への心理的ハードルが下がります。

また、商品の開発ストーリーを動画やSNSを使って紹介することで、ユーザーの共感を呼び、その商品を選ぶ理由を提供できるでしょう。商品に関するQ&A形式のコンテンツや専門的なアドバイスも、購入の意思決定を後押しするのに効果的です。

ECサイトでマーケティングに活用できるコンテンツの種類

ECサイトでコンテンツマーケティングを効果的に実施するには、ターゲットユーザーのニーズや興味に合わせて適切なコンテンツを選ぶことが重要です。

ここでは、主に活用される4つのコンテンツの特徴を解説します。

・ブログ記事
・動画投稿
・メールマガジン
・SNS

それぞれ詳しくみていきましょう。

ブログ記事

ECサイト内にオウンドメディアを開設することで、ユーザーに価値ある情報を提供することができます。

例えば、「季節のおすすめアイテム」や「商品の選び方」といった記事を掲載することで、顧客が商品選びに役立つ情報を得られます。

こうしたコンテンツを通じて、商品の魅力を伝えながら、自然な形で商品ページへ誘導することができ、ユーザーの購買意欲を高めることが可能です。

また、良質なコンテンツが積み重なることで、検索エンジンからの評価が向上します。検索エンジンは、ユーザーにとって有益で質の高いコンテンツを優先的に表示するため、定期的に更新されるオウンドメディアは、検索結果でのランキング向上を促進します。

これにより、検索流入の継続的な増加が見込め、SEO効果を活かして集客を長期的に維持することが可能です。

動画投稿

動画投稿は、商品の魅力を視覚的に伝えられるコンテンツです。ユーザーに商品の具体的な使用感や使用方法に関する情報を提供することで、購買意欲を高められます

例えば、YouTubeで「商品の使い方」や「購入者のレビュー動画」を配信すると、商品が実生活でどのように役立つか直感的に伝わります。さらに、動画から購入ページへのリンクを設置することで、視聴者をスムーズに購入へ誘導することも可能です。

また、オウンドメディアに動画を埋め込むことで、ユーザーの滞在時間が延び、検索エンジンから有益なサイトと評価されて検索順位の向上につながります。

メールマガジン

メールマガジンは、登録ユーザーに直接情報を届けられ、商品のリピーター育成やファンづくりを実現できるコンテンツです。定期的な配信を通じてユーザーとの関係を継続的に深め、ブランドへの好感度を高められます。

例えば、ユーザーの購入履歴に基づいて、関連商品や使用方法を紹介することで、新たな購入機会を提供できます。ほかにも、特別オファーや期間限定セールの配信により、リピート購入の促進も可能です。

このように、メールマガジンは一人ひとりの関心に合わせて情報をカスタマイズでき、ほかのコンテンツよりも具体的で個人に響く内容を届けられます。

SNS

SNSは、手軽に情報を発信し、ユーザーとのコミュニケーションを深めるのに適したコンテンツです。「いいね」や「コメント」などによるエンゲージメントを通じて、ユーザーとの距離を縮め、ブランドへの親近感を高められます。

例えば、Instagramではショッピング機能を活用し投稿から商品ページに誘導したり、ストーリーでキャンペーンを告知したりすることで、コンバージョン(ユーザーが購入など利益につながるアクションをすること)につなげられます。

また、X(旧Twitter)では、自社が指定するハッシュタグを活用したキャンペーンなどで、効果的な情報の拡散が可能です。

SNSは通常投稿であれば無料で運用できるため、人件費のみでマーケティング施策を始められる点も強みです。

ECサイトでコンテンツマーケティングを成功させるポイント

ECサイトでコンテンツマーケティングを効果的に実施するためのポイントを2つ紹介します。

・自社商品の特性や顧客に応じてコンテンツを選ぶ
・質の高いコンテンツを継続的に制作する

それぞれ詳しくみていきましょう。

自社商品の特性や顧客に応じてコンテンツを選ぶ

コンテンツマーケティングを成功させるためには、自社商品の特性や顧客層のニーズに合ったコンテンツ形式を選ぶことが重要です。適切なコンテンツを選ぶことで、メッセージがターゲットに効果的に届きやすくなり、マーケティングの効果を最大化できます。

例えば、化粧品やアパレル商品といった視覚的要素が重要な商材では、YouTubeやInstagramなどで発信する動画コンテンツが有効です。また、若年層をターゲットにする場合、X(旧Twitter)やTikTokを活用した簡潔でインパクトのある情報発信が適しています。

一方、技術的な要素が強いPCや家電製品は、使用方法や注意点を詳しく解説する記事形式が効果的です。「持ち運びに便利なノートPC選びのポイント」や「トラブルシューティングガイド」といった専門性の高い記事はユーザーに信頼感を与え、購買意欲を高められるでしょう。

質の高いコンテンツを継続的に制作する

コンテンツマーケティングで効果を最大限に引き出すには、単発的な取り組みではなく、長期的かつ継続的に質の高いコンテンツを発信することが重要です。

ユーザーに価値ある情報を提供し続けることで信頼関係を構築し、ブランドへのロイヤリティを高められます

まず、ターゲットユーザーを詳細に分析することが重要です。年齢や性別、ライフスタイル、興味関心などを細かく把握し、ユーザーが抱える課題やニーズを明確にしましょう。

例えば、育児で忙しい30代の母親をターゲットにする場合、「忙しいママでも簡単に作れるレシピ動画」や「小さい子ども向けの育児グッズの選び方」といったコンテンツが効果的です。

また、自社の独自性を活かすことがコンテンツの差別化につながります。他社では得られない商品開発の裏話や顧客からのフィードバックを盛り込むことで、「このブランドだから選びたい」という信頼と共感が生まれます。

なお、継続的なコンテンツ制作は時間と労力が必要となるため、社内のリソースやノウハウが不足しているなら、専門会社への外注も有効な選択肢です。外注により、プロの視点を借りて質の高いコンテンツを効率的に制作できるでしょう。

ECサイトでコンテンツマーケティングを行った企業事例

ECサイトでコンテンツマーケティングを効果的に活用している2社の成功事例を紹介します。

・株式会社桃屋
・株式会社ニトリ

それぞれ詳しくみていきましょう。

株式会社桃屋

株式会社桃屋が家事の豆知識を紹介するオウンドメディア「暮らしのクリップ」を活用した成功事例を紹介します。

当初、桃屋は自社商品を使ったレシピの紹介からECページへ誘導する「かんたんレシピ」をホームページで公開していましたが、アクセス数が伸び悩んでいました。

そこで、より幅広い顧客層にリーチするため、日常生活に役立つ情報を集めた「暮らしのクリップ」を新たに立ち上げました。「暮らしのクリップ」では、ユーザーの日常生活を豊かにする情報を提供しながら、自然な形で「かんたんレシピ」への導線を組んだことが特徴です。

その結果、「暮らしのクリップ」のアクセス数は20万件を超え、「かんたんレシピ」への流入も2万件以上を記録しました。オウンドメディアを通じて桃屋の商品の魅力が広く伝わり、ファン層の拡大に成功したといえます。

出典:「かんたんレシピ」のアクセス急増!商品の魅力を伝えるコンテンツ作りでファン層の拡大に成功

株式会社ニトリ

株式会社ニトリは、SNSを活用したマーケティングで大きな成果を上げています。とくにInstagramでの取り組みが顕著で、2025年1月時点で150万人以上のフォロワーを獲得し、ECサイトの集客につなげているのが特徴です。

ニトリのInstagramでは、商品の使用方法や収納アイデア、インテリアコーディネートのヒントなど、実用的なコンテンツを継続的に配信しています。商品の魅力を具体的に伝え、フォロワーの購買意欲を高めています。

さらに、指定ハッシュタグを使った写真投稿キャンペーンを展開しているのもポイントです。ユーザーがニトリの商品を使った写真を投稿すると、抽選でニトリ商品券が当たるといった参加型コンテンツを積極的に展開しています。

これらの施策により、顧客エンゲージメントが向上し、新たな顧客層への認知拡大も実現しました。

まとめ

ECサイトでのコンテンツマーケティングを成功させるためには、自社商品の特性や顧客層を踏まえつつ、質の高いコンテンツを提供することが重要です。その際、適切なプラットフォームを活用し、成功事例を参考にしながら戦略を立てる必要があります。

また、コンテンツマーケティングは、長期的な視点で取り組むことが求められます。コンテンツの改善を継続的に続けることで、自社の売上とブランド認知度の向上を実現できるでしょう。