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BtoB向けコンテンツマーケティングの基本
BtoB向けのコンテンツマーケティングは、主に企業間取引において見込み顧客や既存顧客に、価値あるコンテンツを提供することで、信頼関係を築いていくマーケティング活動を指します。
単なる商品やサービスの売り込みではなく、顧客が抱える課題を深く理解し、それを解決するための情報やノウハウを提供することが特徴です。以下では、BtoBのコンテンツマーケティングの基本について紹介していきます。
コンテンツマーケティングがBtoBに有効な理由
BtoB向けのマーケティングにおいて、コンテンツマーケティングが重要視される理由は、BtoC商材と購入プロセスの違いにあります。
BtoCでは消費者が個人的な好みや感情で購入を意思決定することが多いです。一方で、BtoB向け商材は、複数のステークホルダーが関与し、より長期的で慎重な意思決定プロセスが求められます。
このことから、BtoBマーケティングにおける購買プロセスでは、リード創出から受注までの各フェーズにおいて、顧客との継続的なコミュニケーションが重要です。この流れを考慮すると、コンテンツマーケティングがどの段階でも非常に有効であることがわかります。
各フェーズに応じた適切なコンテンツを通じて顧客とコミュニケーションを続けることで、最終的な受注へとつながるスムーズな購買プロセスを支えることができます。コンテンツマーケティングはファネルのどの段階でも重要な役割を果たし、効果的な施策であるといえます。
BtoBのマーケティング戦略におけるコンテンツの役割
前述の通り、BtoBでは一般的に購買プロセスが長く、複数の意思決定者が関与します。そのため、BtoBにおけるコンテンツマーケティングでは、各ターゲット企業や意思決定者のニーズに合わせた「パーソナライズ」が非常に重要です。
各ターゲット企業や意思決定者が直面している特有の課題やニーズを深く理解し、それに応じたコンテンツを提供することで、より効果的なアプローチが可能になります。
これらの段階を踏んだコンテンツの提供は、BtoB特有の長い意思決定プロセスをスムーズにし、購入後の満足度向上や顧客の長期的な維持にもつながります。業界や役職ごとのニーズに応える「パーソナライズ」は、BtoBのコンテンツマーケティングにおいて、より確実にターゲット企業と良好な関係を築くための重要な戦略といえるでしょう。
BtoBコンテンツマーケティングの具体的な手法
BtoB企業に有効なコンテンツマーケティングには、以下のような手法があります。
・コンテンツSEO
・ホワイトペーパー制作
・メール配信
・事例コンテンツ
・ウェビナー
これらの手法を組み合わせることで、BtoB企業はより広範囲の顧客を引き付け、関係性を築きながら、製品やサービスの価値を伝えられます。
それぞれの手法について、詳しくみていきましょう。
コンテンツSEO
コンテンツSEOとは、自社のウェブサイトやブログなどでユーザーに有益なコンテンツを提供し、検索結果からの流入を増やす手法です。検索結果からの自然流入を増やすことは、質の高い見込み客の呼び込みにつながります。
具体的な施策としては、適切なキーワードやタイトルの設定、メタタグの設定、コンテンツの品質向上などがあります。
ホワイトペーパー制作
ホワイトペーパーとは、企業が見込み客に対して提供する資料です。ホワイトペーパーは、顧客の検討段階で重要な情報源となり、新規顧客の獲得につながります。
顧客の関心を引くためには、顧客の問題解決に役立つ統計データや専門的な知識、業界のトレンドなど、実用的な情報の記載が重要です。
コンテンツマーケティングにおいては、通常はウェブサイトからダウンロードできるPDFや、パワーポイント形式で提供されます。
メール配信
メールマーケティングは、見込み顧客に対してメールを送って購買を促したり、関係を築いたりする手法です。
SNSが普及した現代においても、メールは働き世代にとって重要なコミュニケーションツールであり、とくにBtoBのコミュニケーションでは主流となっています。
種類には、メール広告やメールマガジン、ステップメールなどがあります。メールは多くのビジネスパーソンが使い慣れているため、ほかの施策に比べて実行のハードルが低いこともメリットです。
事例コンテンツ
事例マーケティングとは、導入事例コンテンツによって顧客に利用イメージや信頼性を伝える手法です。
製品によって他社がどのような成果を上げたかを明確に示すことで、見込み顧客が自社での導入イメージを具体化でき、購買の意思決定に大きな影響を与えます。
導入事例には実際のユーザーの感想や声を掲載するとより効果的です。リアルな声を掲載すると顧客の不安や疑問の解消につながり、製品やサービスへの信頼を高められます。
ウェビナー
ウェビナーマーケティングは、ウェビナー(オンラインで行われるセミナーや講義)を通じて、顧客にアプローチする手法です。
ウェビナーはオンラインで開催できるため、場所や距離を気にせず世界中の顧客にアプローチできます。
また、ウェビナーマーケティングでは、情報提供だけでなく参加者と双方向のコミュニケーションができる点もメリットです。
参加者はリアルタイムで質問やコメントができるため、参加者と深い関係を築くきっかけとなります。
BtoBコンテンツマーケティングの進め方
BtoBコンテンツマーケティングの導入は、以下の流れで行いましょう。
1.目的の明確化
2.ペルソナの設定
3.バイヤージャーニーの作成
4.KPIの設定
5.コンテンツ制作・公開
6.効果測定・改善
ステップごとに詳しく解説します。
1.目的の明確化
まずは自社の営業課題をもとに、コンテンツマーケティングの目的を決めましょう。目的が不明確なままだと、質の良いコンテンツを制作しても求める成果につながりません。
例えば、自社サービスの認知拡大に課題があるのか、商談数に課題があるのかなどによって、必要なコンテンツは変わります。認知拡大であれば発信力のあるSEO記事やSNS、商談数に課題がある場合はサービスへの関心を高めるメルマガの導入、といった使い分けが一例です。
その際、継続的なアプローチが可能といったコンテンツマーケティングならではの強みを活かせる目的を設定すると、広告とあわせて施策の効果を高められます。
2.ペルソナの設定
ターゲットのペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、自社商品・サービスのターゲットを具体的にイメージし、細かな情報を設定した架空の人物像です。
BtoBでは、問い合わせや商談などを実際に行う企業担当者と所属企業のペルソナをそれぞれ設定することで、抱える課題やニーズなどを推測しやすくなります。
具体的には、以下のような項目を設定しましょう。
対象 | 項目 |
人物像 | ・性別 ・年齢 ・担当部署 ・役職 ・決裁権の有無 |
企業 | ・業種 ・創業年数 ・売上の規模 ・従業員数 ・社風 |
過去の商談データや営業担当者への聞き取り、業界紙の最新情報などをもとに検討すると精度の高いペルソナを設定できます。
3.カスタマージャーニーの作成
ペルソナをもとに、自社商品・サービスに関するカスタマージャーニーを作成しましょう。見込み顧客が商品・サービスを認知して購入の意思決定をするまでの行動や心理について、認知・検討・決定といった各段階に分けて整理します。
例えば、BtoB企業の見込み顧客との主なタッチポイントには、自社サイトやSNS、セミナー、展示会、名刺交換などがあります。
これらのタッチポイントにおける情報収集の仕方や決裁のプロセスなどを洗い出し、コンテンツを活用するタイミングやアプローチの仕方などを検討してください。
4.KPIの設定
KGI(重要目標達成指標)をもとに、コンテンツごとに達成すべきKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。KPIの設定により、施策の方向性や優先順位を決めやすくなります。
例えば、集客が目的のコンテンツのKPIにはPV数や問い合わせ数、ホワイトペーパーのダウンロード数などを設定します。一方で、売上向上が目的の場合には、コンテンツを通じて獲得する商談数や顧客単価などがKPIの例です。
もしPV数を増やしたいのであれば、まずは潜在層を幅広く集めるコンテンツSEOに力を入れるなど、KPIに基づきコンテンツ制作の方向性を定められます。
5.コンテンツ制作・公開
カスタマージャーニーやKPI・KGIをもとに作成すべきコンテンツを決め、優先度の高いものから作成・公開しましょう。BtoBは、商品・サービスの導入までに複数人が関与するので、誰もが納得しやすい信頼性の高い情報が求められます。
具体的には、見込み顧客が抱える課題の解決につながるノウハウや最新の業界動向など、価値ある情報を提供し続けることが大切です。他部署にもヒアリングしつつ、自社ならではの専門性の高い情報を盛り込みましょう。
また、コンテンツごとに、資料ダウンロードや問い合わせなどのユーザーに期待する行動を検討した上で、バナーや問い合わせフォームなどのCTAを設置します。これにより、ユーザーに対して具体的な行動を促せます。
6.効果測定・改善
コンテンツを公開したら、KPIの達成度合いを定期的に確認し、現状把握と改善点の洗い出しを行いましょう。KPIが未達の場合は、コンテンツの配信方法や内容などをカスタマージャーニーと照らし合わせた上で方針を見直します。
例えば、ホワイトペーパーのダウンロード数が多くても商談につながっていない場合は、内容がニーズに合っていない、読むだけで満足されているなどの原因が考えられます。そのため、内容の見直しや、取得した情報を活用した営業といった追加策が必要です。
一方で、KPIを達成している場合はその理由を特定し、新規コンテンツの制作や既存コンテンツの見直しの参考にしたりしましょう。
こうした効果測定と改善を繰り返すことで、より効果的なコンテンツマーケティングを実現できるようになります。
BtoBコンテンツマーケティングの成功事例
BtoBコンテンツマーケティングの成功事例を4つご紹介します。
サービスの導入事例(ユミルリンク株式会社)
ユミルリンク株式会社は、メール配信システム「Cuenote(キューノート)」を中心に企業に対してメッセージプラットフォームを提供している企業です。同社では、導入事例を参考にしたいという顧客の声をきっかけとして、導入事例コンテンツの拡充を始めました。
業種・業態ごとの導入事例を説明するコンテンツの数を増やした結果、商談機会の増加につながっています。また、導入事例のコンテンツをパンフレットに掲載して、オフラインでのプロモーションにも活用することにより、営業力の向上も実現しています。
出典:未知のインタビュー記事制作で導入事例の公開数が倍増、顧客の声を効果的に伝える成功事例
経営ハッカー(freee株式会社)
経営ハッカーは、freee株式会社が運営するオウンドメディアです。中小から中堅企業の経営者や財務責任者がターゲットで、経営や財務などの専門的なトピックを、わかりやすい言葉や具体例を使って説明しています。
記事下部には、freeeの自社サービスが情報や解説とリンクした形で紹介されており、自社サービスの認知や利用促進に成功しています。
LIGブログ(株式会社LIG)
株式会社LIGが運営するLIGブログは、同社の主要事業であるWeb制作やデザインにフォーカスしたオウンドメディアです。Web制作の知識や経験をもとに、LIGの社員自身がコンテンツを執筆しています。
また、LIGブログでは技術的な情報だけでなく、バズ(SNSでの拡散)を狙った面白いコンテンツを発信している点も特徴です。SNSでの拡散を促進することで、ブランド認知の拡大に成功しています。
LISKUL(ソウルドアウト株式会社)
ソウルドアウト株式会社のLISKULは、Webマーケティングに関する情報を提供するオウンドメディアです。
マーケティング初心者をターゲットにしており、リスティング広告の基礎や運用方法などを分かりやすく解説しています。
LISKUL自体が600以上の記事で検索エンジンの上位表示に成功しており、信頼性の高い情報源としての地位を確立しています。
HRソリューションラボ(株式会社ミナジン)
1989年に誕生した株式会社ミナジンでは、人事関連のコンサルティングをはじめ、システム提案やノウハウに関するコンテンツを提供している企業です。人事の仕事は、企業の規模や時代の変化に伴う労働環境の変化により、さまざまな問題があります。
人事担当者が持つ悩みや課題をメディアに落とし込み、見込み客となる企業担当者との接点を作るため定期的な情報配信をしています。未知株式会社にてメディアの記事作成をサポート。その結果、顧客からの問い合わせが以前より増えるようになりました。
そのほか、具体的な未知株式会社のコンテンツマーケティングの事例は以下をご参照ください。
関連記事:コンテンツマーケティング成功事例13選!BtoB・BtoCの成功要因を解説
関連資料:“ファン形成型”コンテンツマーケティングのご案内-未知株式会社
BtoBコンテンツマーケティングを成功させる秘訣
BtoBコンテンツマーケティングを成功させる秘訣には、以下の2つが挙げられます。 ・長期的に取り組めるよう社内理解を得る ・SEO以外の施策にも取り組む それぞれ押さえておくべきポイントを解説します。
長期的に取り組めるよう社内理解を得る
長期的にコンテンツマーケティングの取り組みを進められるよう、事前に社内理解を得る必要があります。社内理解が不足していると施策が打ち止めになり、期待する成果を出せないままコストが無駄になる可能性があるためです。
社内理解を得るには、費用対効果の見通しやコンテンツの制作体制の確保などについて、経営層や部署の責任者の納得を得られる説明が不可欠です。競合のマーケティング施策も調査しながら、客観的なデータや根拠に基づくプレゼンを行いましょう。
またBtoBの場合は、見込み顧客をコンテンツで獲得したら、営業担当へ引き継ぎが必要なこともあります。その場合に備えて、営業担当とすり合わせを行い、適切なタイミングで見込み顧客を引き渡せる体制を構築しておきましょう。
SEO以外の施策にも取り組む
BtoBコンテンツマーケティングを成功させるためには、SEO施策だけに注力するのではなく、別の施策にも取り組む必要があります。
SEOで獲得できるユーザーは、コンバージョン(ユーザーが購入など利益につながるアクションをすること)から遠い潜在顧客も多く、すぐには成果が出ない傾向があるためです。
BtoBでは顧客の決裁プロセスが複雑で長期化しやすく、SEO対策をしたコンテンツを通して一度流入しただけのユーザーは成約に至らない可能性が高いといえます。ホワイトペーパーや会員向けのメルマガなど、流入したユーザーへ長期的に働きかけられるコンテンツを活用した施策を行いましょう。
また、セミナーや展示会などのオフラインの場でも活用できるコンテンツを用意し、多角的なアプローチでユーザーと継続的な関係を構築するのも効果的です。
まとめ
BtoBのコンテンツマーケティングでは経営者や購買担当者を対象とするため、BtoCよりも高度な専門知識と信頼性が求められます。
そのため、専門性を活かした価値ある情報提供と、継続的な取り組みがBtoBコンテンツマーケティングを成功させる鍵となります。自社でのマーケティングが難しい場合は、外部への委託も検討するとよいでしょう。