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ブランディングによって売上は伸びるのか
「ブランディング」については、肯定的な意見がある一方、否定的な意見も散見されます。
否定的な意見の代表的なものは、「認知度やイメージをあげるというブランディングの手法が曖昧で、本当に売上増につながるのかわからない」というものです。
確かにブランド構築に取り組んだからといって、すぐさま売上が伸びるわけではないでしょう。ブランディングが成果をあげるには、ある程度の期間が必要です。しかし、「これがブランディングの成功例である」という事例も、実際に挙げることができます。
よく知られた成功例は、カルビーの「フルグラ」でしょう。「フルグラ」は、ドライフルーツがミックスされたシリアルです。2002年から2009年ごろ、フルグラの年間の売上高は30億円ほどで横ばいでした。
シリアルは手軽に食べられ、栄養バランスにも優れているのが特徴ですが、その手軽さから「シリアルは手抜きだ」というイメージができてしまっていました。特に子供をもつ母親の年代からは、「朝ごはんにシリアル」はいい印象ではなかったようです。
そこでカルビーは、「シリアル」の持つイメージを変えるべく、戦略PRを行いました。まず「シリアル」から「グラノーラ」と呼び方を変えました。また、ご飯やパンの代わりの食品としてではなく、ヨーグルトと一緒にとるなど、違った食べ方を提案しました。
また、グラノーラの専門店があることに注目し、「これからはグラノーラの流行が来る」という流れをメディアを利用して作りました。このようなブランド構築の手法により、フルグラは「シリアルは手抜きで、一部の人の食べるもの」と思ってきた消費者のイメージを変えることに成功し、売上をそれまでの7倍に伸ばしたということです。
カルビーの成功は、グラノーラ市場自体を活性化しました。従来は250億円が限界だとされていたグラノーラ市場は、2020年には1000億円規模になると推測されています。
このように、ブランディングは明確な結果を出すことができる手法だといえます。やみくもに行うのではなく、市場の分析から目標の設定までをきちんと行うことで、ブランディングは効果を発揮するでしょう。
売上が伸びるだけじゃない!ブランディングの効果とは
ブランディングは売上を増加させるために行う戦略ですが、効果はそれだけにとどまりません。ブランディングをすることで、PR、販促、集客といった面において、メリットがあると考えられます。
以下では、ブランディングを行うことで他社よりも優位に立てるのはなぜか、また優秀な人材の確保にも寄与するのはなぜかという2つの点についてご紹介します。
他社よりも優位に立てる
ブランディングの目的は、「○○といえばこの会社」「○○はこの商品」といったように、消費者の意識の中に自社の存在を確立することです。ブランド構築のメリットは、消費者の意識を変えることにより、他社よりも優位に立てるという点です。
商品を選ぶときに、一番初めに「○○といえばこの会社」と思い出してもらえることで、価格競争に巻き込まれにくくなります。同種の似たような商品があった場合、顧客は良いイメージの企業が提供するものを選ぶでしょう。
また、良いイメージを抱いてもらうことは、企業のイメージアップにもつながります。例えばスターバックスコーヒーは決して安価な価格設定とはいえません。
しかし、顧客の多くがスターバックスのもつ都会的なイメージを評価しているために集客につながっています。イメージアップは、顧客に選ばれやすい企業になることだといえるでしょう。
同様に、競合他社との差別化を図ることができます。市場には、同じような商品・サービスが溢れています。そのなかで顧客に差別してもらえるようなブランド構築は、企業の強みになるでしょう。
優秀な人材の確保
ブランディングの効果として期待できるもう一つの点が、優秀な人材の確保です。ブランディングの目的は、消費者に良い企業イメージを抱いてもらうことにあります。よいイメージは、売上増に貢献するだけでなく、求職者にも魅力になると考えられます。
Apple Inc.(アップルコンピュータ)のもつ革新的なイメージは、新しいことに取り組みたい、最先端の技術やデザインの仕事をしたいと思う求職者をひきつけるでしょう。
シャープはTwitterのフォロワーが多い企業として有名ですが、公式アカウントでのゆるいつぶやきは、求職者の興味をひくのではないでしょうか。
憧れの企業で働くことは多くの人の望むことであり、それが実現したときには、そこで働く人たちの自尊心が高まります。自分たちがそのブランドを作っている、また守っているという労働者の気持ちは、ブランドイメージ向上という好循環を生むでしょう。
また、好きな会社で働くことがモチベーションにつながることで、社内環境も良くなることが期待できます。働く人たちの満足度の向上は、離職率の低下につながります。優秀な人材の流出を防ぎ、人材不足の解消に役立つでしょう。
ブランディング成功のコツ
ブランディングの効果について見てきましたが、ではどのような方法がブランディングを成功に導くのでしょうか。
ブランディング成功には初めの分析が重要です。内部環境分析、外部環境分析をおろそかにすると、時間と費用の無駄になりかねません。次の項目ではブランディング成功のコツについてご紹介します。
現状を分析し、ポジショニングを確定させる
ブランディングは、競合する企業に差をつけるために行うものです。まずは現状を把握し、ポジショニングを確定させることを考えましょう。
すでに寡占しているような企業が存在する分野では、そこからのブランド構築はかなり難しいため、自社が食い込む余地があるのかをまずとらえます。その上でブランド構築にチャレンジするならば、最終的な目的を明確にする必要があるでしょう。
目標設定のためには、自社の強みと弱みを把握しなければなりません。自社のどこがブランドとして顧客に受け入れてもらえるのか、同業他社と比較した際の弱みはどのようにしたら改善できるのかを基本に考えます。
また、消費者のどのような層をターゲットにするのかも重要です。自社の商品やサービスに興味を持ってくれるのはどのような消費者なのか、顧客像を設定しましょう。ターゲットが明確になることにより、伝えたい情報もはっきりしてくるでしょう。
戦略の使い分けをする
自社の強みと、ブランディングの方向性が決まったら、戦略を考えます。自社に対して、消費者にどのようなイメージを抱いてもらいたいのかによって、手段は変わってきます。
企業や商品、サービスに対する認知度を高めたい場合には、イベントを行ったり、試供品を配布したりする方法が挙げられます。まずはそれまで自社を知らなかったという消費者に存在を知ってもらうということです。
イベントの雰囲気は、その企業に対する消費者の印象を左右するでしょう。抱いてもらいたいイメージを催事に携わるスタッフとの間で共有することが大切です。
試供品の配布は認知度をあげるよい方法です。この場合も、イメージ戦略にあった配布物、デザイン、場所、ターゲットなどを考えて行います。
商品の品質向上をアピールしたい場合は、技術面を押しだす方法をとります。たとえば東京都大田区に集中している町工場では、冬季オリンピックの競技でもあるボブスレーを製作し、日本選手や海外のチームに提供しています。
日本のものづくりの高い技術を世界に知ってもらうことで、町工場に対するイメージが変わったブランディングの成功例となっています。
以上、ブランディングについてのさまざまな面についてご紹介していきましたが、困ったときには未知株式会社にご相談ください。