目次
ブランドレゾナンスピラミッドはブランドエクイティ(資産)を高める
まず、ブランドレゾナンスピラミッドに関わるブランドエクイティとは何か、ブランドレゾナンスピラミッドとはどういったものなのかを解説します。
ブランドエクイティとは
ブランドエクイティとは、ブランドの資産価値のことを指します。ブランドという目に見えないものを資産として評価し、投資や育成を行って価値を高めようという考え方です。
具体的にブランドエクイティは、以下の表にある5つの要素で構成されています。
要素 | 概要 |
ブランドロイヤリティ | ・ブランドへの忠誠心や愛着度 ・ブランドロイヤリティが高いと、競合の商品があっても自社ブランドの商品を選んでもらえる |
ブランド認知 | ・ブランドがどのくらい知られているかの度合 ・ブランド認知が高いと「〇〇と言えば△△」という自社ブランドが連想される |
知覚品質 | ・ユーザーから見た品質の評価 ・近く品質が高いと、自社ブランドの商品に対する安心感や信頼度が高まる |
ブランド連想 | ・自社ブランドの名前を聞いたときに連想されるすべてのもの ・「この商品・サービスは体にいい、爽やかな青色のイメージ」などポジティブな連想をされることが大切 |
その他のブランド試算 | ・上記4要素以外の無形資産のこと ・商標権・特許権・著作権などを指す |
関連記事:【4つの要素】ブランドエクイティとは?成功事例から戦略を学ぶ!
ブランドレゾナンスピラミッドとは
ブランドレゾナンスピラミッドとは、ブランド資産を高めるための思考プロセスをピラミッド型に表現したものです。ダートマス大学のケビン・レーン・ケラー教授が提唱し、別名ブランドエクイティピラミッドとも呼ばれています。
ブランドレゾナンスピラミッドは、4つのステップと6つの領域で構成されており、体系的で分かりやすいのが特徴です。ブランドレゾナンスを、左脳的(理性的)なルートと右脳的(感情的)なルートで、段階的に理解するのに有効なツールといえるでしょう。
ブランドレゾナンスピラミッドの構造
ブランドレゾナンスピラミッドは4つのステップと6つのブロックに分かれている構造が特徴です。それぞれの内容を解説します。
ブランドレゾナンスピラミッドの4つのステップ
ブランドレゾナンスピラミッドにはブランドエクイティを高めるために、以下4つのステップを踏む必要があります。
■アイデンティフィケーション
日本語で識別や本人確認といった意味をもつ「アイデンティフィケーション」は、ブランドレゾナンスピラミッドの最下層ステップにあたります。
このステップは、まだ顧客が自社の商品やサービスを利用する前の状態です。顧客が自社の商品やサービスを知らない状態であるため「この企業は何であるか」を顧客に認識してもらうためのステップであるといえるでしょう。
アイデンティフィケーションを高めるには、SNSなどWebメディアや広告、TVCMなどをもちいて認知を拡大していく方法があります。本ステップは、後続ステップの決め手になる可能性が高く、第一印象が非常に重要です。
■ミーニング
顧客が商品やサービスを利用し始めるステップが「ミーニング」です。ユーザーにブランドを認知されたうえで、よりブランドの特徴やポジショニング、価値がユーザーに理解された状態を目指します。実際に体感することで、顧客にとっての有用性が判断され、その後も継続的に利用するかどうかを決める重要なステップといえます。
ユーザーに有用であると判断されるには、商品性能や使用方法を分かりやすく工夫することが重要です。また、ブランドコンセプトを固めて顧客にどういったブランドであるかを伝えると、より強固なポジショニング確立につながります。
■レスポンス
商品やサービスを何度か利用した顧客が、長期的に利用するメリットがあるかどうか判断するステップが「レスポンス」です。レスポンスのステップでは、ユーザーの長期的な利用を促すために、競合との差別化が重要となります。
他社と比べて自社ブランドを選んでもらうには「機能性が優れている」「安心できる」「好感が持てる」など、品質の評価や信頼を得る必要があります。そのために、レスポンスのステップでは、商品やサービスの品質を高めることに注力すべきです。
この段階で競合他社以上のメリットを感じてもらえれば、顧客のロイヤル化に近づくことでしょう。
■リレーションシップ
顧客が自社商品やサービスを毎日継続的に利用する最終ステップが「リレーションシップ」です。リレーションシップでは、ブランドの評価を下げない・ロイヤリティを高め続けることが重要です。ユーザーがブランドのファンとして定着し、ブランドエクイティが最大化され、ロイヤルカスタマー化が実現した段階といえます。
ファンはリピーターとなりブランドに愛着を持っているため、高評価レビューや口コミを拡げてくれる存在です。大切なファンを手放さないため、ファンの信頼を裏切らずブランドプロミスを遵守しましょう。
ブランドレゾナンスピラミッドの6つの領域
次に、ブランドレゾンナンスピラミッドを構成する6つの領域がどのようなものか、それぞれ解説します。
セイリエンス(Salience)
セイリエンスは日本語で「突出性」を意味します。「○○と言えばこの商品だ」というように顧客に思い出してもらえるか、認識の深さやポジショニングを確認できる領域が「セイリエンス」です。
自社の商品やサービスが市場でどのように認知されているのか、第一印象や知名度、市場でのポジションはどうなのかによって、ブランド認知に大きな影響を及ぼします。
パフォーマンス(Performance)
左脳的・理性的なルートの「パフォーマンス」は、商品やサービスの機能や性能への理解のことです。
機能性やデザイン、ユーザビリティといった物理的な特徴から、顧客にとって価値のあるものかどうかが判断されます。そのため、パフォーマンス領域では、ハイスペックであるかどうかより、顧客の求める機能(ニーズ)を満たしているかが重要です。
イメージ(Imagery)
右脳的・感情的なルートの「イメージ」は、自社商品やサービスに対する印象やイメージのことです。「洗練されている」「新しい」「親近感がある」など、顧客のブランドに対する認識といえます。
イメージ領域では、企業が持たれたいイメージと、顧客のイメージが合致することが重要です。例えば、自社がターゲットとしているユーザーが「子ども向け」「子育て世代の親」であるのに対し、顧客からのイメージが「ビジネスパーソン」「社会人向け」だとターゲットからの支持は得づらいです。そのため、顧客のイメージにずれが生じないようにしましょう。
ジャッジメント(Judgment)
左脳的・理性的なルートである「ジャッジメント」は、自社商品やサービスが提供する価値や機能が、顧客にとって有用であるとポジティブな理性的評価が下った状態です。「便利だ」「有用である」「安全だ」といった、判断がなされた結果になります。
フィーリング(Feelings)
右脳的・感情的なルートである「フィーリング」は、「信頼できる」「好感が持てる」といった自社商品やサービスに対してポジティブな感情的評価が下った状態です。
競合と機能面で比較した際に、差別化が難しい場合、どのようなフィーリングを顧客が感じているかが重要なポイントになります。例えば、二社の商品が同じような機能・性能を持っていた場合、最終的に愛着を感じている商品を選ぶ可能性が高いため、フィーリングは重要な領域です。
レゾナンス(Resonance)
ブランドレゾナンスピラミッドの頂点にあたる「レゾナンス」は、顧客の自社商品、サービスへのロイヤリティが最大化された状態です。自社が掲げるブランドエクイティが高まり、顧客のロイヤルカスタマー化が実現した理想的な状態といえるでしょう。
企業事例からみるブランドレゾナンスピラミッド
ブランドレゾナンスピラミッドをどのように活用したら良いか、スターバックスと伊右衛門、コカ・コーラという身近な事例で確認することで理解度を深めましょう。
スターバックスの事例
ブランドレゾナンスピラミッドの6つの領域にスターバックスを当てはめると、以下のようになります。
レゾナンス:おしゃれで都会的な居心地のよいカフェチェーン
ジャッジメント:おいしい、いつでも楽しめる、安心できる
フィーリング:心地良いカフェの時間を楽しめる、ほかにはないリラックスの空間を得られる
パフォーマンス:品質が高い、店舗数が多く立地がよい、清潔である
イメージ:おしゃれな、優雅な、上品な、都会的な
セイリエンス:コーヒーを中心とした飲食を提供するカフェチェーン
スターバックスは「サードプレイス」という概念を提唱し、質の高いコーヒーだけではなく空間そのものの価値を高めました。その結果「くつろぎの空間」「仕事や勉強の空間」など、顧客がそれぞれ自分の空間をスターバックスに求めています。
一貫性のあるサービス展開やブランディングが成功した例といえるでしょう。
伊右衛門の事例
伊右衛門におけるブランドレゾナンスピラミッドは以下の通りです。
レゾナンス:可能な限りこのブランドを買う
ジャッジメント:品質が良い、石臼挽き茶葉と上質を活かす特別な製法、ほかにも薦めたい
フィーリング:味わいがある、落ち好きを感じる、安心する
パフォーマンス:竹筒ペットボトルに特別感を感じる、商品名が良い、茶葉が上質である、天然水、価格の割には高品質
イメージ:どこでも購入できる、本格的緑茶、こだわりの茶葉
セイリエンス:よく知っている、よく見かけるようになった、物語風CMが心象的
伊右衛門は、印象的な物語風のCMと本格緑茶という2つのイメージを顧客に刷り込むブランディングを、積極的に展開しています。その結果、本格的嗜好性飲料として現在の地位を確立しました。
コカ・コーラの事例
コカ・コーラにおけるブランドレゾナンスピラミッドは以下の通りです。
レゾナンス:世界中で愛されている炭酸飲料
ジャッジメント:おいしい、気分が高揚する
フィーリング:家族や友人と楽しく過ごす時間
パフォーマンス:美味しさ・爽快感・独特な味で満足感がある
イメージ:パーティ・ハッピー・楽しい遊びの時間
セイリエンス:炭酸飲料=コカコーラと思い出してもらえる存在
コカ・コーラは世界的に認知度が高く、多くの人々に愛されている炭酸飲料です。その理由には、美味しさはさることながら、ポジティブなイメージの効果も大きいでしょう。炭酸のはじける爽やかさがパーティーや楽しい時間と結び付き、顧客のハッピーな気持ちや高揚感につながっていると考えられます。
まとめ
自社商品の販促やブランディングを行う際には、ブランドレゾナンスピラミッドを活用して目指す方向性を決めましょう。ブランドレゾナンスピラミッドはブランディングの基本といえるため、この機会にぜひマスターしてください。