目次
ブランド力とは?
ブランド力とは、商品やサービスのブランドがもつ影響力や認知度の高さをあらわします。「ブランド力が高い」状態は、顧客・顧客が商品やサービスに対して良いイメージをもっており、かつ広く認知されていることをさします。
たとえば、洗濯用洗剤を購入するとき、顧客は価格や成分、用途など商品自体の特徴の他にブランドで選びます。「A社が好きだから買う」「B社はイメージが良くないから買わない」などの選択肢は、ブランドに対する顧客のイメージの違いによる結果です。
ブランド力が高ければ、顧客は「あの会社が出しているなら買ってみようかな」と、新しい商品やサービスに興味をもってくれます。
ブランド力を高めることのメリット
ブランド力を高めるメリットとして、3つ紹介します。
競合他社との差別化が図れる
競合他社も類似商品やサービスを提供している場合、ブランド力の高さが顧客の購買行動に影響しやすくなります。
ブランド力が高ければ「洗剤ならA社」「コスメならB社」と第一想起にあがりやすくなり、差別化が期待できます。
ブランド力は、大きく分けると「企業」「事業」「商品・サービス」の3種類です。
仮に企業のブランド力が高いA社が新商品を発売したとき、多くの顧客は「A社なら安心」とポジティブなイメージにもとづいて購入を前向きに考えてくれます。
音響機器の事業で高いブランド力をもつB社がワイヤレスイヤホンを発売した場合も、顧客は「音響関係で有名なB社なら品質は良いはず」と期待します。
特定の商品やサービスで高いブランド力を得ているC社が、人気シリーズで新商品を発売した場合、ブランドのファンが購入してくれる可能性が高いといえます。
上記3例のように、すでに勝ち得ている信頼性に後押しされて、競合他社よりも選ばれやすくなることがブランド力を高めるメリットです。
根強いファンを獲得しやすくなる
ブランディングは、顧客のファン化に役立ちます。顧客のロイヤリティを高め、帰属意識をもたせられるため、根強いファンの獲得につながります。
ロイヤリティとは、商品やサービスに対して顧客が抱く愛着や信頼、忠誠心のことです。
顧客が自社の商品やサービスに愛着をもっていると、競合商品よりも手にとってくれる可能性が高くなります。
価格面で多少劣勢となっていたとしても、ロイヤリティが高ければ、顧客は愛着のある商品を選んでくれます。
ブランディングによる根強いファンの獲得は、商品が選ばれやすくなるだけではありません。
リピーターが増えれば広告費など新規開拓にかける費用を抑えられるため、商品やサービスの販売にかかるコストを軽減できます。
組織力を向上できる
高いブランド力は、社外に加えて社内にも大きな影響を与えます。
ブランドイメージが確立されていると、価値を生み出す会社の理念に従って働く人が増え、組織力の向上が期待できます。
ブランドは従業員にとって、働くときの指標です。どこを目指せば良いかの判断基準となり、メンバー同士の連帯感が生まれます。
所属する会社が何を目指しているのか、何のために働くのかをブランドとして表すことで、採用時も理念に共感した人材が集まりやすくなります。
理念に共感したうえで入社した人材は、ミスマッチによる離職が起こりにくいのが特徴です。
確立されたブランドを理解して入社しているため、最初から企業理念に沿った行動を心がけてくれる人材が多く、結果的に離職率低下につながります。
優良な取引先が生まれやすくなる
社外に対する効果として、優良な取引先の獲得もあげられます。高いブランド力がある企業は、前述のとおり組織力も高くなるのが特徴です。
優良な顧客と盤石な組織が形成されており、「あの会社は実績があるから安心」「しっかりとした会社だから信頼できる」と、優良な取引先と新たな縁を結ぶ機会に恵まれます。
取引先の新規開拓は、ブランド力が低ければ自社から営業をかけなくてはなりません。
一方、ブランド力の高い企業は社名や事業内容が知られていることも多く、自ら動かずとも他社のほうから営業をかけられるようになります。
顧客にしろ取引先にしろ、新規開拓は自社の知名度が低ければ難易度が高くなるのが一般的です。しかしブランド力で知名度が向上すれば、新たな取引先を獲得しやすくなります。
ブランド力を高めるための手法
高いブランド力は、日々のブランディングによる結果です。
自社のブランド力を高めるための方法を、5つのステップにもとづいて紹介します。
ブランディングの目的を社内共有する
ブランディングを成功させるためには、目的を定めることと社内で共有することが重要です。
社内の人間は、ブランドの体現者でもあります。体現する側の人間がブランドについて何も知らない状態でいると、認識が統一されません。
従業員の指標となるはずのブランドイメージ自体にブレが生じて、日々の行動やいざというときの決断に影響してしまいます。
ブランディングは目的を共有することに加えて、必要性を伝えることも重要です。ブランドの核となるメッセージを社内で共有し、ブランディングする目的や必要とする理由を共有しましょう。
商品・サービスの環境分析をする
的確にブランディングするためには、現状把握が不可欠です。自社の商品やサービスが現在置かれている状況を、さまざまな方法で分析します。
ブランディングにおける環境分析の主な方法は、ファイブフォース分析、PEST分析、3C分析の3種類です。
ファイブフォース分析
5つの脅威(業界内の競合の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力、新規参入の脅威、代替品の脅威)に着目して、環境分析する方法です。
たとえば業界内の競合の脅威を調べるときは、競合他社の数と市場の成長率、差別化の状況などをもとに分析します。競合他社が多すぎると、業界内での差別化が難しくなります。
PEST分析
4つの外部環境(政治、経済、社会、技術)が現在や将来、自社にどのような影響をもたらすか予測するために活用される分析される方法です。政治関連による影響の例として、法緩和や改正、規制などがあげられます。
外部環境ごとに4つに振り分けた情報には、事実と解釈が含まれます。よって必ずしも分析結果どおりの脅威が将来起きるわけではありません。場合によってはチャンスに転じる可能性も考えられます。
3C分析
自社の商品やサービスに関わるミクロ環境の顧客、競合、自社の各視点から自社における市場環境を分析する方法です。3C分析を行うと、自社の商品やサービス、競合に関する強みや弱み、課題を把握できます。
上記であげた環境分析の方法は、いずれも着目する指標やメリット・デメリットが異なります。活用するときは、各分析結果を見て総合的に判断しましょう。
市場優位性のある強みを見つける
自社商品やサービスが顧客の第一想起をとれるような、市場優位性を見つけます。
同じ商品でも発売元やコンセプトが異なれば、機能や使い心地、丈夫さなどに違いが出ます。自社の商品やサービスは、競合他社の類似商品に対してどのように優れているのかを見つけましょう。
また、どのような方向性で市場優位性がある部分をアピールするかも重要です。顧客に他社よりも魅力的である、と伝わる売り方で強みをアピールする必要があります。
ブランドの提供価値を決める
顧客が特定のブランドを選び、愛用するのは、提供される価値に魅力や喜びを感じているからです。
ブランディングするときは、必ず顧客へどのような価値を提供するのか明確にしましょう。
・品質の高さを実感してほしい
・希少性に価値を感じてほしい
・親しみやすさを覚えてほしい
・驚きを体験してほしい
・デザインを楽しんでほしい
など
たとえば人気コーヒーショップの中には、単に商品を提供するだけではなく、独自の雰囲気を演出しているところもあります。
店舗内装やアイテム、スタッフの質にこだわって、お客様のための特別な一杯を提供するまでの過程をエンターテイメント化したショップです。
一方で、バリスタ厳選の豆を使用しつつ、マシンの完全オートメーションで「いつでも誰でも同じ味を手軽に安く」楽しめることを重視するサービスもあります。
同じコーヒーを提供するだけでも、自社のブランドでお客様にどのような喜びを感じてほしいか、どのような価値を提供したいかによって、構築されるブランドイメージは異なります。
将来的に商品やサービスの方向性にブレが生じないよう、ブランドの立ち上げ時点で提供価値は明確に言語化しておくことが重要です。
ブランド名・ロゴなどを決める
顧客に親しまれるようなブランド名・ロゴなどを作成します。
認知度を高めるためには、ありきたりな名前やデザインは避けることが重要です。既存の競合ブランドと似た名前やデザインは顧客の混乱を招くだけではなく、マイナスイメージを生みかねません。
ブランドを構成する要素は背景・ストーリーやイメージ、デザイン、カラーなど複数あげられます。
背景・ストーリーが分かりやすく、名前を聞いただけで多くの顧客が容易に思い浮かべられるようなブランド名とデザインを意識しましょう。
ブランド力をブランディングで高めた事例
ブランド力をブランディングで高めた事例には、スターバックスやセブンイレブンなど、数多くの有名な成功事例が存在します。
ブランディングは商品やサービスによって異なり、商品やサービスなどのコンセプトや商品価値の高さ、従業員満足度から派生する高いサービスの提供などがあります。自社の企業にとって参考になる事例も多く、過去の事例から学ぶのも重要な要素です。
過去の事例に合わせて同じことを行うのではなく、消費者のアプローチ方法や企業が外部に与えるイメージの構築方法を論理的に考え、参考にするといいでしょう。
たとえば、ブランドイメージを構築するブランドロゴ1つとっても、カラーやフォント選び、ブランドロゴから与える企業イメージまでも考え、作り上げた企業が数多くあります。
そこに裏付けされた企業コンセプトや理念をもとに、一貫して商品やサービスに反映するという企業理念から学ぶことが多いでしょう。自社の商品やサービスを頭に浮かべながら、いくつかの成功事例からブランディングの秘訣をひも解いていきましょう。
スターバックス
スターバックスは、高い商品力とサービス精神によりブランドロゴのイメージを定着させ、広告宣伝をせずに集客できるブランドイメージを構築した企業の1つです。
世界中にあるコーヒーショップであるスターバックスは、1971年アメリカのシアトルで誕生し、2020年現在で1500店舗以上を展開しています。
スターバックスのミッションは、「人々の心を豊かで活力あるものにするためにひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」とし、スターバックスをサードプレイスと位置する顧客作りに取り組んでいます。
スターバックスは、顧客との関係性をより高めるため、商品開発はもちろんのこと、従業員に対する教育やクオリティーの高いサービスを追求しました。
日本国内に限らず、世界中どこのスターバックスに行っても、テキパキとしたスタッフが飲み物を提供してくれる徹底したサービス力は、独自で開発したマニュアルと企業コンセプトに基づいたサービスの一環です。
また、スターバックスはサービスだけでなく、コーヒーをカスタマイズすることで、一人ひとりの顧客に寄り添った商品作りを行っています。
スターバックスといえば、緑の丸いマークがブランドロゴとなっていますが、ブランド力が定着した現在は広告の役割を果たしています。
Apple
Appleは、パソコンをはじめとする電化製品をシンプルかつ美しいデザインや優れた機能性でブランドイメージを作り、Apple独自のシステムやプログラムを構築することで、ブランド力を高めた企業の1つです。
アメリカのカリフォルニア州で誕生したAppleは、パソコンや携帯電話などをはじめ、数々の電化製品やサービスを製造販売しているメーカーです。
Appleの製品は、顧客目線の物作りを行い、自社製品やシステムを通して、顧客の生活をより豊かかつ便利にできるかを考え製品を開発しています。
Appleは企業理念を掲げず、自由な発想と先を見据えたビジョンで、世の中に製品を通してAppleの思想を訴えてきました。Appleの思想やイメージを作ったものは、ユーモアかつインパクトのある広告です。
Appleの広告は自社の製品を全面に出すような広告ではなく、自分たちの製品や思想を何かに例えて訴える手法を使っています。ストーリー性のある広告は話題となり、消費者が広告の持つ意味やストーリーを話題にする中で、自然とAppleの思想が広がっていきました。
セブンイレブン
セブンイレブンは、コンビ二のパイオニア的な存在から、これまでの常識を覆す斬新な商品開発により、ブランド力を高めた企業です。
アメリカのテキサス州にある氷小売販売店は、顧客のニーズに合わせてコンビニとして姿を変え、1970年代になり日本に初めてコンビニとして導入されたのがセブンイレブンです。
現在は、コンビ二業態が増える中、セブンイレブンのブランド力の強みは、他には真似できない独自の商品開発です。よりよい商品を消費者に届けるため、セブンイレブンでは他メーカーと共同開発した自社ブランドを開発しました。
自社ブランドの需要の高まりを受け、よりこだわりの強い「セブンプレミアム」や「セブンゴールド」のブランドを開発します。こだわり抜いた品質と味わいは、価格競争にも負けない強い商品を作り、セブンイレブンのブランドイメージを確固たるものにしました。
またセブンイレブンは、設立当初から使用していたブランドロゴを活かしたロゴマークを使用しています。自社で開発したプライベートブランドにもロゴマークを使用することで、商品の統一感が生まれ、商品自体を宣伝効果のあるものへと変化させました。
ルタオ
ルタオは、自社のスイーツを多くの人に届けるため独自の冷凍技法を開発し、地元北海道というこだわりの素材を使用したスイーツを世界中に広め、人気のブランドへと発展した企業です。
北海道の小樽で誕生したルタオは、北海道の素材を使用したチーズケーキやスイーツを扱う店舗で、現在は日本国内に限らず海外にも店舗展開を果たしています。
地元で人気を集めたルタオのチーズケーキですが、お客様からいただいた自宅配送の要望に応えるため、冷凍技術の研究を行いました。
生のチーズケーキを冷凍技術によって道外へも配送できるようになり、どこでも北海道のおいしいチーズケーキが食べられるブランドとして確立されました。
現在では、ネットショッピングで食品を配達することも増えましたが、スイーツ業界では先駆け的な存在として認知され、現在も世界中の多くのファンを持つ人気ブランドへと成長しました。
まとめ
ブランドは、企業の内外に方向性や独自性をアピールする、大切な要素です。従業員にとってさまざまなシーンで行動を左右する指標となり、ユーザーにとっては商品・サービスを選ぶポイントのひとつとなります。
効果的にブランドの魅力を発信・浸透させるためには、適切なブランディングが欠かせません。
ブランド力を向上させられるか否かは、アピールのやり方次第です。作り上げたブランドイメージを正しく伝えられるように、発信方法もこだわりましょう。